テクノロジーSponsored
コカ・コーラが強い組織をつくるために、日韓マーケティング会議で「XR」を導入した狙いとは【日本コカ・コーラ 和佐高志、ALPHABOAT西谷大蔵 対談】
2022/08/03
国内の清涼飲料市場において高いシェアを維持し、最近ではレモンサワー「檸檬堂」で新市場を開拓した日本コカ・コーラ。そのマーケティング部門を統括する同社 最高マーケティング責任者の和佐高志氏が中心となり、2022年5月に日本と韓国の合同マーケティング会議で、ALPHABOAT(アルファボート)が提供する仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの次世代テクノロジー「XR(クロスリアリティ)」を活用しました。なぜ同社は社内会議にXRを活用したのか、その背景と併せて強いマーケティングチームをつくる秘訣やインナーコミュニケーションの重要性ついて、ALPHABOAT 社長の 西谷大蔵氏が和佐氏に詳しく話を聞きました。
強いマーケティングチームには「好奇心」が必要
西谷 和佐さんは、日本と韓国のマーケティング部門を統括していらっしゃいます。まずは、どのようなミッションを掲げているのか教えてください。
和佐 当社は、グローバルで「Refresh the World. Make a Difference. (世界中をうるおし、さわやかさを提供し、前向きな変化をもたらすこと)」をミションに掲げています。世界中にいる約6000人のマーケティングメンバーと日々協力しながら、そのミッションの達成に取り組んでいます。
その中で我々は、日本の120人と韓国の30人を合わせて150人程度のチームを形成してマーケティングに取り組んでいます。そのミッションは、研究開発本部などの他部署と連携しながら製品の供給やブランディング、新商品のイノベーションを考えることです。そして、五輪や2025年に大阪で開催される日本国際博覧会への協賛など、様々な活動を行うのも我々の仕事になります。
和佐 高志氏
西谷 マーケティングチームを率いる上で、大切なことは何だとお考えですか?
和佐 チームを率いる上では、好奇心が重要だと思っています。世界中で起きているイノベーションなど、様々な情報に対してアンテナを張り、「消費者にこれを提供したら、こんな風に喜んでもらえるのではないか」と考えることが大事です。そういう意味では「Connecting The Dots(点と点を新たにつなぐ)」という言葉をよく使って、好奇心の重要性をチームメンバーに伝えています。
西谷 強いマーケティング組織をつくる中で、具体的にチームビルディングやマネジメントという観点ではどうされているのですか?
和佐 まずは会社のミッションを土台に、日韓それぞれの中長期的な数値目標と戦略を理解してもらうことが重要です。次に、現在コカ・コーラでは5つのカテゴリーに分かれたマーケティング部門と、それを支えるIMXいうクリエイティブを担う部門など、複数のチームで編成されています。
日韓のチームが会社のミッションや目指しているポートフォリオを達成するために、それぞれが何をするべきかをしっかりと落とし込んでいくことが大事です。そうやってミッション達成のために、個人がするべきことを可視化して、理解してもらいます。
それを本当の意味で理解できると、マーケティング部門だけでは実現できないことが多いことに気づき、他部門や関係各社とのコラボレーションの大切さを実感するようになります。
ニューノーマルの世界に向けた新しい働き方の模索
西谷 日本コカ・コーラのマーケティングチームでは、他部門とのコミュニケーションの促進を大切にしているわけですね。
西谷 大蔵氏
和佐 はい、コロナ禍でオンラインミーティングが多くなり、顔を突き合わせたコミュニケーションが減少したことをとても危惧しています。朝夕の通勤がなくなるなど便利な面がある一方で、効率が悪くなる面もあります。また、自動販売機の前やカフェテリアで何気なく話していた会話が、さきほどお話したような好奇心を引き出すきっかけになっていました。やはり対面でしか実現できないことがあると感じています。
とはいえ、我々もオンライン環境にすっかり慣れてしまったので、今後はニューノーマルとして、オンとオフを組み合わせたハイブリッドなコミュニケーションになっていくでしょう。新型コロナが完璧に収束したわけではないので、オフィスに来るにしてもいろいろな制約があります。そうした状況の中で、いかに密なコミュニケーションをして、さまざまな情報をやり取りする中で、コラボレーションを生み出すかという点にすごく苦労しています。
西谷 コロナ禍で社内会議もTeamsやZoomなどのオンラインツールの利用が当たり前になるなど、インナーコミュニケーションを取り巻く環境も大きく変化していますね。
和佐 そうですね。さきほど申し上げた通り、社内でのコミュニケーションもオンとオフがハイブリット化していくと考えています。本当はグローバルで人と人の交流をもっと活発にすべきですが、まだ難しい状況です。その中では、可能な範囲で、日韓のメンバーがお互いの国を行き来できるようにしていきたいですね。
というのも、ビジネスは人と人がつくっているので、そのネットワークを利用した交流で情報を共有することで相乗効果を生み出せるからです。むしろ今だからこそ、人と人との交流を生みだすことが一番大切だと思っているぐらいです。
ただ、チームメンバーに「オフィスに出社したいですか?」と質問すると、「1週間に1回ぐらいなら出社したい」や「そもそもオフィスはなくてもいい」と回答する人もいるのが現状です。社会全体で見ると、週5日の出社が基本な会社もあり、リモートワークへの対応は会社によって全然違います。このような状況下で、日本コカ・コーラ全体としてどうするのか、現状では「各チームに任す」ということになっています。
私はマーケティングチームの指針を出さないといけないので、今はヒアリングをしている段階です。私個人としては、対面でしかできないこともあるため、「週2日程度はオフィスに戻ってきてほしい」という希望を持っています。
当社には毎週金曜日15時以降は仕事をしないで、本を読んだり、休んだり、個人の好きなように自由に時間を使ってもらう制度があります。金曜日は休みやすい環境にあるため、例えば、「火木は出社」みたいにできればと思っています。
社内会議に「XR」を導入した背景
西谷 今回、和佐さんに日韓合同でのマーケティング会議に「XR」を採用してもらいました。その背景を教えいただけますか。
和佐 Teamsなどによる通常のオンライン会議では、パワーポイント主体のプレゼンテーションで、どこか物足りなさを感じていました。そんなときP&G時代の先輩であるアルファボートの鈴木睦夫氏にバーチャルスタジオを紹介されて見せてもらったところ、登場人物がかなり綺麗に、しかも背景とシームレスに映ることに驚きました。これを使えば、フェイストゥフェイスの体験に近づくことができるのではないかと、私の好奇心が掻き立てられました。同時に、実際の会議とは違う面白い世界が実現できるかもしれないという期待もありました。
実際、会議にXRを導入して上手くいくかどうかはわからなかったのですが、私自身いつもチームメンバーに「とにかく好奇心を持ってトライしてほしい」と伝えているので、ある意味で「みんなにハッパをかける」という狙いもありますね。