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【速報】電通が新AI戦略を発表、企業秘密ノウハウを元に広告コピー生成ツール開発
AIは「人間の知」の集積
電通を含む国内電通グループは5日、独自のAI活用戦略として新ビジョン「AI For Growth」を発表した。AIの知を人間の思考や試行錯誤の集積と捉え、「人とAIが互いに高め合う」というコンセプトのもと、企業のマーケティングやトランスフォーメーションの支援、プロダクト開発といったクライアントサービスの他、グループの膨大な知見やデータを活用したデータインフラや人材育成プログラムの拡充、コーポレート機能の強化など8領域の取り組みを展開する。
記者会見で同グループのデータ&テクノロジー プレジデント/事業会社担当の山口修治氏は「グループでは過去8年以上に及ぶAI活用の歴史があるが、生成AIが本格化してからビジネスでの活用ペースが急激に早まっている。グループが提案するサービスの全てにAIを活用し、アップデートする戦略的かつ包括的な取り組みとして『AI For Growth』を位置付ける」と話した。
中でもマーケティング支援においては、電通のコピーライターが長年培ってきた思考プロセスをAIに学習させた独自のAI広告コピー生成ツール「AICO2(アイコツー)」を開発したと明らかに。2017年にリリースした初代「AICO」が、電通のコピーライターが考案したコピー約1万作品を学習したものだったのに対し、AICO2はコピーだけでなく、そのコピーを書いた意図や思考プロセスを同時に学習させているのが特徴。現時点では電通社内での活用にとどまる。
「琴線に触れるコピー」を生み出す新ツール
「AICO2」の開発の背景には近年、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の生成AIによって生成された広告コピーが一般的に活用されるようになった一方、「そのままでは心の琴線に触れるコピーとして活用するには不十分」という問題意識があったという。
そこで同グループは、長年、社内のコピーライター研修講座で培われてきた企業秘密のキャッチコピー創造ノウハウをファインチューニング(追加学習)させ、電通社内に蓄積された膨大なキャッチコピー群を題材として「コピーライターの思考回路」を学習させた「創造的思考モデル」を開発。このモデルを用いた「AICO2」が生成したキャッチコピーについて、「心が動く」「新しい発見」「意外性がある」といった6項目を評価基準として、AIを用いずに人間だけで考えたコピーと、ChatGPTと人間が協業して生み出したコピーとで性能評価を比較したところ、「AICO2」のコピーの品質が向上する傾向が見られた。(東京大学AIセンターと共同実施。成果を2024年度人工知能学会にて発表)
会場で実際に「AICO2」を用いて瞬時にコピーを大量生成するデモを行った電通 CXクリエーティブ・センター エクスペリエンスニュートラルデザイン3部 クリエーティブ・ディレクター/コピーライターの川田琢磨氏は「AICO2のアウトプットが正解とは思っていない。たとえば私は比較的真面目で論理的なコピーを考えてしまいがちだが、AIがつくった意外性のあるコピーを見て気づく点もある。人間とAIそれぞれの強みを掛け合わせ、クリエーターやプランナーの創造性を拡張し、高めていきたい」と語った。