データ・ドリブン・マーケティングの実践に向けて #01
2つのPDCAサイクルを回すことで、広告予算の最適化が近づく【電通 西田悟史】
Large PDCA:MMMによる予算最適化
「Large PDCA」における代表的なソリューションは「MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」です。MMMとは、重回帰分析に代表される統計手法を用いて、様々な要因が売上に及ぼす効果を数値化する計量経済学モデルです。MMMによって、売上を最大化するための最適予算配分を算出することが出来ます。
分析には、①売上 ②売上に影響を及ぼすと考えられる要因(各マーケティング施策、価格、天候など)を日別や週別などの単位で収集された集計データ(注1)を用います。
(注1):POSデータに代表される(個人ベースのデータが集計された)データは「集計データ」と呼ばれます。一方でID付POSデータなどに代表される個人ベースのデータは「非集計データ」と呼ばれます。
上図の通り、売上を各要因の効果に分解するようなイメージです。あるブランドの1年間の売上が100億円だった場合、Web広告の影響が10%であれば、Web広告によって10億円の売上が増加したことを意味します。
各マーケティング施策が売上に及ぼす効果を特定することが出来れば、費用対効果(=各施策が売上に及ぼす効果÷各施策の予算)を算出することができます。
ただし、各マーケティング施策の投下金額によって、売上への影響は異なると考えられます。例えば、ある施策の投下金額を増やせば増やすほど、売上が増加し続けるわけではないと考えられます。
そこで、費用対効果などの算出を行う際には、売上反応曲線というデータ加工を行います(※様々な反応曲線の中から、統計手法を用いて、最も当てはまりの良い反応曲線を選択します)。売上反応曲線を用いることで、各マーケティング施策の予算配分を変更することで、どのくらい売上が増減するかをシミュレーションすることができ、売上が最大となる最適予算配分を算出することも可能となります。
Small PDCA:Small Massごとに最適なプランニングが必要
仮に、広告施策の最適予算配分の算出結果が、テレビ広告85%:WEB広告10%:その他広告5%だったとします。この結果をもとに、年間計画などを策定していくことになります。ただし、複数のSmall Massを狙う場合、各Small Massに対するマーケティング活動に対して、この予算比率を全てに当てはめて良い訳ではありません。まとめ:2つのPDCAによる予算最適化
Large PDCAでは各マーケティング活動の費用対効果を再検証したり、年間予算配分の見直しなどを行いながら、同時にSmall PDCAでは、各Small MASSに対するアプローチのチューンナップを行っていきます。Large PDCAとSmall PDCAをループさせることによって、Small Massに根差した真の最適予算配分が完成します。- 他の連載記事:
- データ・ドリブン・マーケティングの実践に向けて の記事一覧
- 1
- 2