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サントリーが進めるデジタル人材育成講座 #01

サントリー若手社員が支店トップレベルの売上、成果につなげたデジタル人材研修とは

 顧客接点のデジタル化やEC化率の増加によって、企業のデジタル人材の育成が急務になっている。

 サントリーは近年、そうした人材育成のための研修プログラムを開発。若手の営業担当者が研修で学んだことを実践し、担当するEC企業の売上を対前年比300%に伸長させ、支店のトップレベルに押し上げるなど、大きな成果につなげている。

 現在では、その効果が認められ、社長直下のプロジェクトとして全社に受講者が広がっている。本コラムでは、そういったデジタル人材育成を主導するサントリーコミュニケーションズの室元隆志氏が、デジタル領域のリテラシーを高めるために必要な知識や考え方を紹介していく。

 

デジタル人材育成プログラムを開発した背景

 私は現在、サントリーコミュニケーションズのデジタルマーケティング本部で、サントリーグループのデジタルマーケティングの開発・推進の仕事を担当している。

 サントリー入社は1988年。スタートは宣伝部で、主にイベントやエリアのメディアを担当。その後、5年間ほど業務用(飲食店)の生ビール開拓営業を経て、2000年4月から、当時サントリーグループで2人しかいなかったデジタル担当の3人目として、この業界に携わることになった。

 体系的に、デジタル人材の育成のフォーマットをつくり始めたのは、2008年頃だっただろうか。その理由は、2つあった。

 自分自身、営業部門からデジタル部門に異動し、当時システム部門内にあったデジタル担当チームで交わされている言葉の意味がわからなかった。もちろん、体系的な教育プログラムなんてものはなく、自分で外部の識者やパートナー企業に聞きながら教えてもらい、ひとつずつスキルを身に付けていくことに多大な労力を費やした。さらに失敗も多く、いらぬ苦労をすることが無駄に思えたのだ。

 もうひとつは、2003年にメンバーからマネジャーになり5年ほど、事業規模の拡大とともに少しずつデジタル部署のメンバーが増えていくにつれ、OJTだけでは周囲の期待に応えられる人材になるのに時間が掛かり過ぎると感じるようになったことだ。
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 そこで、部署異動してきたメンバーに、まず「デジタルの基本的な考え方」をインストールすることを始めたのだ。

 デジタルの知識を詰め込むというより、デジタルで成功するための基本的なフレームワークを体系化し、変化の激しいデジタル業界の中で、新しいツールやメディアに振り回されることなく、ビジネス成果を出す、本質に絞り込んで「体感」し、実践に生かせるものを目指した。

 このとき、今も続いているインプレスさんの「企業Web担当者 初級講座」の講師を担当しながら、今までの経験を体系化したものを土台に、社内研修用の「基礎講座」を完成させた。

 以来、当社のデジタル担当者は、この社内向けの「基礎講座」で基本的なフレームワークを「インストール」されてから業務に携わる、という流れができた。

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