マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #01

私がCRM・マーケティングオートメーションに限界がきていると考えた理由【LIFULL菅野勇太】

AIがもたらす本当のインパクトとは?

 本当の意味のOne to One、究極のソリューションの手段は何か?

 それを考える上で、One to Oneを志向した価値提供のプロセスを「0.人・企業文化」「1.データ」「2.マーケター」「3.CRM」「4.マーケティングオートメーション」「5.アプリケーション」のレイヤーに整理した。(図:1to1ソリューションの構成要素は将来こう変わる)
 
1to1ソリューションの構成要素は将来こう変わる
 これはあくまでも集客して顧客化した1stPartyデータに対してアップセルやクロスセルを仕掛ける際のプロセスとして見ていただきたい(CRM、MAは、同じ言葉でも企業や業態、使われる文脈によって意味するものが異なるであろうが、ここでは比較的狭義の機能として捉えているためご了承いただきたい)。

これを現状の積み上げではなく5年後の未来から逆算して考えると、構成要素はどう変わるだろうか。

 レイヤー0と5は大きく変わらないだろう。アプリケーションのレイヤーではEmailが縮退しスマートスピーカーが加わるなど、統廃合の新陳代謝が起こるだけだ。レイヤー1は重要な変化があるかもしれない。IoTやロボティクスの存在により、リアル寄りのデータが大量に取得できるようになる。また、データの主権が誰に帰属するかの問題が今後どう進んでいくかも未知数だ。

 CRM、MAと、それを設計・設定する人間というレイヤーは、「誰に/いつ/何を/どのように」というコミュニケーション設計を担い、セグメント配信を実現している。このレイヤーはAIとの付き合い方において根本から変化を求められることは間違いない。

 本当の意味のOne to Oneの実現を目的とするならば、そもそもセグメント別にシナリオ配信を行う手段として発展したCRM、MAの思想は過去の遺物となりうる。これらは人間の頭がルールを決めて入力する前提で産まれたものだからだ。100万人の顧客に対し100万通りのルールを人が決めて設定することは不可能だ。同時に、CRM、MAに指示を与えるシナリオ設計という業務プロセスさえ不要になり、マーケターに求められるスキルセットも大きく塗り替わるだろう。

 価値提供のプロセスが大きく塗り替わる、入れ替わる、そしてあるプロセスは存在すら消え失せる、そんな状況から逆算して今必要な対応が何かを考える。セグメント配信から脱出したいならば、CRM、MAの思想から脱出することだ。

 この先の5年間も今までと同じ踊り場に居続けるわけにはいかない。「5年後の実際」を想像し、本気で手を打つ時が来た。
 
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