テクノロジーがもたらすマーケティング・イノベーション #01
ブロックチェーン技術が、広告から「中間業者」を排除する
2018/05/10
ブロックチェーン技術が、広告から「中間業者」を排除する
テクノロジーによる破壊的なイノベーション=デジタル・ディスラプションはマーケティングの世界に革命をもたらす。今までにもインターネット、携帯電話、スマートフォンといった新たなテクノロジーによって消費者の行動は劇的に変わり、マーケターは対応を余儀なくされてきた。そして残念なことに、デジタル・ディスラプションがいつどのようにして起こるのかを予想するのは恐らく不可能だ。
しかし、デジタルカメラがフィルムカメラに取って代わった時のように、デジタル・ディスラプションには必ずその芽がある。マーケティング革命に対応するためにはできるだけ早くその芽に気がつくことが重要だ。
今回はその芽となる可能性を持つブロックチェーンを使ったあるプロジェクトを紹介する。
ブラウザ「Brave」は広告の中抜きを排除する
2017年5月31日、ブレイブ・ブラウザー(Brave browser)というアメリカのベンチャー企業が「BAT:Basic Attention Token」という暗号通貨(トークン)によるICO(Initial Coin Offering)を実施した。そして何と30秒で3500万ドルの資金を集めてしまった。ブレイブのCEOは、Webブラウザ「ファイヤーフォックス」を開発・普及させているモジラの元CEO・ブレンダン・アイク氏。彼はJavaScriptの生みの親でもある。
ブレイブの最大の特徴は、広告をブロックすることだ。これを聞いた時点で多くのマーケターはぎょっとするのではないだろうか。
さらにユーザーにもベネフィットがあるように設計されている。不要な広告を目にしなくて済むだけではなく、読み込みが早く、しかもBATトークンが付与される。Googleクロームで閲覧した場合と比較すると、「CNN」は7.2倍、TIMEは8.7倍速くなったという。このようにユーザーが既存のブラウザから乗り換えるメリットが組み込まれている。
ブレイブが熱狂的に支持される背景
ブレイブが注目される背景には、デジタル広告に対する疑念や不満がある。ガーディアンのハミッシュ・ニックリン氏が2016年、投じられた広告費の30%しか同社に入らないケースがあったと明かしている。このようにパブリッシャー、そして広告主はアドテクによってその費用の大半は失われているのではないかとの疑念を持っている。このことに自覚的になっていないマーケターはこの革命から取り残されてしまう恐れがある。
また、AGFA と呼ばれるApple、Google、Facebook、Amazonといった巨大テック系企業に対する本能的な嫌悪感を持つ人々が増えてきていることもブレイブがマーケティング革命を起こす予感を感じさせる要因の1つだ。
Facebookが個人情報流出問題で強い批判を受けたことでそれを感じた人も多いのではないだろうか。今回は詳細に触れないが、ブロックチェーン技術を使って非中央集権社会を実現しようとする人たちの根本にある思想も抑えておきたい。
彼らがブロックチェーン技術によって実現しようとしているのは分散型の社会だ。ブレイブにも同様の哲学を感じているのは私だけではないだろう。ICOブームで一攫千金を狙った投機資金が集まっただけだと高をくくっていると大きな流れを見誤ってしまう。