テクノロジー
ChatGPT広告スタート 小林製薬・バイセルのマーケターに聞く期待と注意点
2026/06/22
ユーザーの興味関心、文脈に合った広告体験となるか
OpenAIは6月10日、日本のChatGPTユーザーを対象とした広告表示システムの導入日を公表した。6月22日以降、Freeプラン(無料)とGoプラン(月額1400円)で、使用時に広告が表示される場合がある。
広告表示は、今年2月に米国で導入したのを皮切りに対象地域を順次拡大しており、現時点では米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4ヵ国に展開している。今回、日本と同じタイミングで英国、メキシコ、ブラジル、韓国も対象地域に加わる模様だ。
過去の会話のトピックやチャット内容、広告に対する反応などをもとに、広告主が出稿した広告と照合し、ユーザーと関連性の高い広告を表示する仕組み。広告主にユーザーの個人情報や会話内容が共有されることはなく、提供されるのは表示回数などの集計データに限られるという。
ChatGPTの通常の回答が広告の影響を受けることはないとされ、広告にはスポンサー表記など通常のChatGPTの回答とは視覚的に区別できる形でチャット画面内に表示される。
ユーザーの情報探索や比較検討、さらには意思決定に至るまで、購買意思決定プロセス全体に深く関与する存在となったChatGPT。広告主である企業にとっては強力な顧客接点となる可能性を秘める一方、活用方法を誤ればブランドイメージの毀損を招くリスクも抱えていると言える。
デジタル広告・デジタルマーケティングに関する経験・知見が豊富なマーケターに、新たな広告プラットフォームへの現時点での期待や、活用にあたって意識すべきポイントなどを聞いた。
小林製薬 大槻氏:従来の1st Party Dataでは、AI時代に最適なカスタマージャーニーはつくれない

大槻 開 氏
小林製薬
マーケティング本部 マーケティング戦略部 戦略推進G
小林製薬
マーケティング本部 マーケティング戦略部 戦略推進G
ここ数ヵ月のChatGPT広告を巡る議論や、先日のGoogle I/O、Marketing Liveの発表を念頭に置くと、今後のユーザー体験は次の2つが入り混じる世界になると予想されます。
1. エージェントコマース(Agentic Commerce)体験:
AIがユーザーの嗜好や条件を完全に把握し、検索を必要とせず自律的に商品を比較・選択・購買まで代行する超システム化・自動化された体験。
2. ダイアログ(対話)体験:
単に「探す」のではなく、ユーザーが「迷って、比較して」、最後にはAIに「背中を押してほしい」とカウンセリングを求めるような、深い対話を重視した体験。
この「システムによる自動決定」と「人間らしい迷いの解消」の双方する体験に共通して問われるのが、「AIプラットフォームに対して、企業側がどのような情報を渡せるか」ということではないかと考えています。
これまでデジタル広告の世界では「1st Party Data」といえば、顧客のメールアドレスや電話番号、サイトの閲覧履歴、購買履歴などを指すのが一般的だったと思います。これらは主に「誰に広告を当てるか(ターゲティング)」や「類似ユーザーを探す」ためのデータとして機能してきました。
しかし、AIが代わりに意思決定を行う、あるいはユーザーの悩みに寄り添う時代において、この「顧客の個人情報や行動ログ」だけでは不十分ではないかと、自分がユーザー目線に立って、より考えるようになっています。「なぜその人にこの商品が最適なのか」というロジックを組み立てるのに、従来の1st Party Dataでは体験として不十分になってしまうと感じます。
AIのモデル自体がすでにコモディティ化しており、企業の競争優位性を決めるのはAIに読み込ませる「自社の個性が色濃い独自のデータ(ナレッジ)の量と質」になります。だからこそ、私たちは1st Party Dataの概念を「顧客データ」から「自社にしか存在しないブランド・事業の暗黙知」へと大きく広げる必要があるのではと思います…が、いかがでしょうか。
社内のあらゆるナレッジにまで拡張された1st Party DataをAIプラットフォームや自社のエージェントに正しく構造化して渡すこと。それによってエージェントコマースは「競合製品より成分とコスパが優れている」という客観的判断を下すことができ、ChatGPT広告も「あなたの悩みなら、こういう想いでつくられたこのブランドがぴったりですよ」と、広告ながらユーザーの背中を優しく押すことができるようになるのではと、明るい未来に思いを馳せています。
BuySell Technologies 田中氏:既存のマーケティング投資成果を最大化するチャンス

田中 奏真 氏
BuySell Technologies
執行役員 マーケティング統括本部 統括本部長
BuySell Technologies
執行役員 マーケティング統括本部 統括本部長
「広告は生活者にとってノイズになる」という前提に立つと、ChatGPT広告も扱い方を誤れば、個人の思考を妨げる存在になります。過剰な売り込みや先回りは、AIとの純粋な対話を乱し、ブランドへの信頼を急速に損ねるでしょう。
単なるキーワード検索とは異なり、ユーザーの思考プロセスそのものに伴走できる接点だからこそ、生活者の意図に合った選択肢を提示するアプローチが重要になります。
何かを調べ、考えを深めているその瞬間に、文脈と地続きの選択肢がさりげなく提示されれば、それは邪魔な広告ではなく、次のステップを支える有益な情報として受け入れられます。このアプローチは、テレビCMなどの認知施策を動かす実務において受け皿になります。各種メディアを通じて興味を持った生活者が、AIとの対話によって思考を深めるまさにその瞬間に、信頼できる選択肢として寄り添うことができるからです。
点在していた各施策が線でつながれば、短期のCPAハックに依存せず、投資全体の生産性を高めることができます。この対話という新しい接点を、既存の投資成果を最大化するチャンスと捉えて挑戦したいと思います。




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