ポスト平成時代の“AIネイティブCxO”量産化計画 #01

デジタルネイティブならぬ「AIネイティブ」な経営者の量産こそ、日本に求められている。【野口 竜司】

AIネイティブCxOの量産がビジネス変革を加速させる!?

 私はAIネイティブな「CxO(CEO・CMO・CIOを代表するCクラスの経営陣)」の量産によって、ビジネス変革が加速すると信じている。

 その変革をテーマにした際に頻出する「デジタルトランスフォーメーション論」や「エクスポネンシャルといった成長曲線論」でも、AIの存在無くして語られることが少なくなっている現在、そのリーダーとなるべきCxOがAIネイティブでなくてよい理由は見つけにくい。

 なお、ここで言う「AIネイティブ」とは、AIを特に意識することなく自然と使いこなしている状態を指す。

 先日、ソフトバンクグループ 孫正義社長が運営する10兆円規模の投資ファンドは、AI関連の企業だけを投資対象とするという考えを明らかにした。AIがビジネス変革を起こし、これからの世の中に大きな価値を生み出す期待の表れであろう。

 AIを現業のビジネスに積極的に取り入れ、イノベーションにつなげられる企業は今後の社会変化に対応していけるし、もしそうでなかったら社会変化に乗り遅れる。AIネイティブな企業は、社会変化そのものを創り上げることもできるかもしれない。

 ただし、これには必須条件がある。リーダーシップをとるべき経営者、つまりCxOがAIを熟知し使いこなせなければならないのだ。もちろんCxO自らがAIのアルゴリズムの細部まで理解したり、プログラムを書いたりする必要はないが、AIを意識することなく自然なものとして取り入れ活用できる必要がある。

 CxOはビジネスを理解したいわばエリート集団であるが、さらに彼ら彼女らをAIネイティブ化することで日本におけるビジネス変革が加速するはずだ。本連載を通じて、ポスト平成時代に向け、AIネイティブなCxOや、その予備軍を量産し、日本におけるビジネス変革を少しでも増やすきっかけになればと思う。


 

「21世紀の石油であるデータ」を企業は使いこなしているのか?

 「データは21世紀の石油だ」と言われ、すでに長い期間が経ち、多くの企業がビッグデータへの投資を進めてきた。顧客接点の多くがデジタル化し、以前では考えられない量のデータの蓄積が可能になった。

 また今後、情報銀行などの取り組みも試験的に開始され、より安全で保証性の高い状態でデータの流通が可能になっていく。通信も5G世代に移ることでIoT関連データなど、これまでに類を見ない超大量データも押し寄せてくる。

 油田を掘り当てたかのように溢れ出すデータ群を、どれだけの企業が本当の意味で使いこなしているのだろうか。これまでに実施してきたビッグデータ投資をしっかり回収しきっている企業は、どれほどいるのだろう。成果をあげる企業もいれば、データ投資の回収期には、まだまだ程遠いという感覚を持った企業が多いのではないだろうか。

 データ投資の回収が進まないという状況を引き起こしている原因の一つに「ビッグデータを“人間が使いこなせない”」ことがあるのではと思う。著者自身もビッグデータ統合やデータアナリティクスの世界に身を置いて長いが、ビッグデータ(最近では、ヒュージデータと呼んでよいほどに、さらに膨張化が進む)は一握りの優秀なデータサイエンティストしかまともに扱えないくらいに、巨大化・複雑化していると感じる。

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