ポスト平成時代の“AIネイティブCxO”量産化計画 #01

デジタルネイティブならぬ「AIネイティブ」な経営者の量産こそ、日本に求められている。【野口 竜司】

データは石油、AIはエンジン。CxOは良きドライバーに?

 ビッグデータを扱う人間の限界をあたかも予測していたかのように、絶妙なタイミングで彗星のごとく再登場したのが「AI/機械学習」だ。

 AIは、これまで第1次、第2次のブームを起こしており、今回は第3次ブームと呼ばれている。今回は多くは語らないが、第3次ブームは深層学習(ディープラーニング)の台頭とビッグデータとの出逢いが火をつけたと言い切っても過言ではない。AIの第1次・第2次ブームの時代には存在しなかったビッグデータとAIは、相互に活かし合う「相思相愛のベストカップル」となったわけだ。

 データが石油であるならば、AIは石油を燃やすエンジンと表現できるだろう。AIは複雑系の世の中の事象・会話・動作などをデータにより学習し、未来を的確に予測したり、会話や動作を再現してくれたりする。



 データそのものが存在するだけでは何も起こらないが、AIはデータを使って世の中やビジネスを変えてくれる「動力(エンジン)」に成り得るのだ。そしてCxOは、車を運転するドライバーのようなものだ。

 CxOは、目的地に的確に早く到着するために、良質な石油(データ)と最高のエンジン(AI)を使って、「最高のドライブができるのか?」をこれから問われる存在なのである。
 

AIに仕事を奪わせるスキルこそCxOの次なる必要能力に

 「AIは人間の雇用を奪うのか?」というAI脅威論をこれまで多く耳にしてきたが、もはやこれは止めようのない事実だと認めたほうがよい。

 今では「タスクのAI化」というコンセプトで、むしろ積極的に企業内の業務タスクをAIに担わせる業務改革プロジェクトを推進する日本企業も出てきている。AIは人間の業務タスクを担うことができる(一部奪う)存在であることを認め、AIを積極的に活用する企業が増えてきているのだ。従業員やパートナーの業務タスクをいかにAIによって置き換えていくか、また高度化させるかが企業競争力の源泉に成り得るとすでに気づき行動に移している企業と、そうでない企業の差は将来に向けて開く一方と言ってよいだろう。

 AI実用期に入ったとも言える今、AIによる業務改革について方針を定め、本気で推し進められるのは企業のトップたるCxOだろう。

 「タスクのAI化」を雇用維持の脅威と捉えず、ビジネス変革の一部と捉え、業務改善に止まらない新しい価値を作り、従業員や顧客に還元しようとする本気の企業姿勢を持つ会社は、従業員や顧客にとっても魅力的な組織に見えるはずだ。そういった意味で「AIに仕事を奪わせるスキル」は、これからの時代にCxOに強く、また緊急性の高いものとして求められる能力・要素になるのではないだろうか。



 広く見るとグローバルエコノミーの中でも、中国やアメリカをはじめとしてAIの実用化は加速度的に進んでいる。日本の企業ならびにCxO(広く経営者)は、この状況にどう立ち向かうのか。

 「CxOのAIネイティブ化」は、万能ではなく経営マターの全てを解決できるわけで勿論はないが、多くの企業にとってゲームチェンジのための重要なキーになるのではないだろうか。ポスト平成に入るこの時代、AIネイティブCxOが量産され、より多くのビジネス変革が起こり、加速していくことを切に願っている。

 次回の連載2回目は、CxOの中でもCMOにフォーカスして「AIはCMOの仕事をどこまで奪うことができるのか?」をテーマに寄稿したいと思う。
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