SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020 #02

ブランドの「求心力」と「遠心力」のバランスが大事。佐藤夏生、山口有希子、リュウシーチャウが語るマーケティング

前回の記事:
消費行動は「BUY」から「VOTE」へ。佐藤夏生、山口有希子、リュウシーチャウが語るマーケティング
 「ソーシャルデザイン」をテーマにした東京・渋谷の都市フェス「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA2020」が11月7~15日に開催された。注目トークセッションとして行われた「Brand Design for Social Design未来をつくるマーケティングへ」をレポート。

 近年のマーケティングの可能性について、パナソニック コネクティッドソリューションズ社の常務でエンタープライズマーケティング本部 本部長の山口有希子氏、ブランドエンジニアリングスタジオ EVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクターの佐藤夏生氏、レノボ・ジャパン マーケティング統括本部 統括本部長のリュウ シーチャウ氏、渋谷未来デザイン 理事の長田新子氏(モデレーター)の4名が9つのキーワードをもとに、議論を交わした(前編は、こちら)。
 

「ブランドの求心力と遠心力」、「Great Experience」


長田 9つのキーワードの中から、「ブランドの求心力と遠心力」について説明をお願いします。
 
<9つのキーワード>
  • BUYから、VOTEへ
  • Purpose
  • Never say no to new things
  • Force for Good.A force for growth
  • ブランドの求心力と遠心力(後編は、ここから)
  • Great experience
  • 課題解決から、可能性創造へ
  • Sustainability
  • Consumer centric

佐藤 「ブランドって何?」と聞いたら、教科書には安心と信頼と書いてありますけど、今はサプライズがないと見向きもされません。満足度より期待値が大事!でブランドの期待値を上げるときは、サプライズが重要だと思います。

そういう意味では、“求心力”と“遠心力”の両方がきちんと釣り合っていることが大切でしょう。求心力だけを追っているとみんなから「古臭い」とか、「変わらない」と認識されてしまうので、サプライズや期待、遠心力みたいなことが大事だと言い続けているんです。
 
EVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクター / Co-CEO
一般社団法人渋谷未来デザイン Future Designer
佐藤夏生

シーチャウ 私がキーワードに出した「Great  Experience」と近いかもしれません。例えば、オンラインショップで花を買うことがあるのですが、その際に普通のダンボールではなく、花柄のおしゃれなダンボールで届いた時のサプライズ感や、さらに中を開けたときに素敵な商品が入っていたことで高揚感を得られることがあります。モノだけでなく、そうしたエクスペリエンスをトータルでつくることがすごく大事になってくると思います。

山口 おっしゃる通り、株価を見ても、儲けている企業だけの株価が上がっているのではなく、未来に対しての期待値がすごく評価される時代だと分かりますよね。そうした期待値は、ブランドによってやり方は違うと思いますが、驚きやサプライズからつながっているような気がします。
 
パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 常務 エンタープライズマーケティング本部 本部長
山口有希子

佐藤 期待値が経済を動かすところがあって、日本企業はそういう意味ではちょっと分が悪い感じがしています。“ビジョン”と“嘘”は、ある意味同義語で、ブランディングもそれに近いものがあって、「これからこれをやるんだ」と嘘が本当になるところに面白さがある。でも、日本企業はまじめに謙虚にしているので、期待値経済では弱いですよね。

山口 分かります。そのため、やはりマーケティングも変わっていかなければいけないと思うのです。当社もプレスリリースや発表の方法をファクトベースではなく、ストーリーを一生懸命につくりマーケティング主導に変えています。

せっかく頑張って素晴らしいものをつくっても、それを知ってもらわなければ意味がありません。社会課題や世の中のためにこのプロダクトがあるというストーリーがあることで、社会からの評価が全く違いますよね。そういう部分では、マーケティング機能が果たすべき役割が大きくなっていると個人的に思っています。
 

「課題解決から可能性創造へ」


長田 続けて、「課題解決から可能性創造へ」についてもお話しください。

佐藤 課題は、ものすごく理解を得やすい言葉なので、そこに向きがちですが、課題の何倍も可能性は大きいと思うんですよ。可能性を見つけると課題が解決されることも多い、でも、課題だけ見ていると課題は解決されない。

僕は未来という言葉があまり好きではなくて、いつも可能性と訳しているんですけど、マーケティングはどんどん可能性の創造になるのではないかという感覚でいます。

シーチャウ 確かに、ブランドとして色々な悩みを持っていたとして、それをブランドとしてトータルでどう変えていけるのかを考えるは、可能性の創造の一部ですよね。
 
レノボ・ジャパン合同会社マーケティング統括本部統括本部長 チーフ・マーケティング・オフィサー/NEC パーソナル
コンピュータ株式会社コンシューマ事業本部マーケティング部長
リュウシーチャウ

長田 一方で、私が行政と接していると、やはり課題解決の話から入っていくことが多くなります。

佐藤 課題には予算が付くけれど、可能性には予算が付かない。合意と予算が取れないため、可能性は追いづらいんですけど、だったら追わなくていいのかという話ではないですよね。

山口 この話、サイエンスとアートみたいな感じですよね。でも、アーティスティックな考え方ではないと、すごいジャンプはできません。

長田 それでは、近年さまざまな場面で語られるようになっている「Sustainability(持続可能性)」について、非常に重要なワードだと思いますが、皆さんのお考えをお聞かせください。

山口 まず「地球があとどのくらいの時間もつのか」は、人類共通の課題ですよね。そこで、個人でも企業でもサスティナビリティを意識した行動を取ることが、今のメインアジェンダになっています。

当社も非常に意識していて色々な活動をしているのですが、なかなか注目されないため、そこはマーケターがきちんとコミュニケーションしていかないといけないテーマだと考えています。

シーチャウ レジ袋が有料化されましたが、7割以上の人がレジ袋を辞退しているそうなんですよね。つまり、今まで必要ではないものを、多くの人がもらっていたということです。同じように、いらなかったけど、何となく貰っていたサービスは他にもあると思います。

山口 先日、ドイツ人から「ドイツでアルプスの水とハワイの水が売っているけれど、ほぼみんなアルプスの水を飲む」という話を聞ききました。なぜなら、「ハワイからわざわざ持ってくる=どれだけCO2を使うのか」というポイントで、環境にやさしい製品を選ぶことがデフォルトになってきているからだ、と。「ああ、なるほど」って思ったんですよね。

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