ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #07

反対意見を言う人は敵だ、とは思いたくない。『カメラを止めるな!』上田監督の信念

前回の記事:
「終身雇用の崩壊で、人は新しい場所を求めている」READYFOR 米良はるかCEO
 ミレニアル世代を代表するビジネスパーソンにアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦氏がインタビューして、現代のマーケティング担当者が知っておくべき消費者の行動やその捉え方を探ります。

 第4回は、映画『カメラを止めるな!』を手掛けた、映画監督の上田慎一郎氏が登場。本作は低予算のインディーズ映画ながら、全国300館以上で上映される異例の大ヒットを記録しました。新作映画『イソップの思うツボ』、『スペシャルアクターズ』   のプロモーション戦略を含めて、上田監督のコミュニケーション論に迫ります。
 

Twitter運用を監督がするのは、映画業界では普通?

左から上田慎一郎氏、徳力基彦氏。

徳力 
以前、映画『カメラを止めるな!』の打ち上げに参加させていただき、映画のプロモーションが成功した秘訣について関係者の方々にいろいろお聞きしたところ、皆さんが口を揃えて「上田監督だから」「上田組だから、ヒットできた」と、お話しされていたことが印象的でした。

そこで今日は、上田監督にあえて失礼ながら作品の中身ではなく、なぜ監督がTwitter上であれだけ丁寧に観客とやり取りをしていたのかも含めて、観客とのコミュニケーションや映画のプロモーションについて深掘りしたいと思っています。

私は上田監督が自ら映画の公式アカウントを運用していたことに驚いたのですが、映画業界では普通なのですか。

上田 メジャー映画では無いと思いますが、インディーズ映画や自主制作映画の場合は監督かプロデューサーが運用している場合が多いですね。

インディーズの場合、人手がないという理由もありますが、やはり、最も作品を愛し、大事にしている創り手自身の言葉が一番熱を帯びると思うので。ただ、SNSは苦手だし面倒だと感じている監督も多いですし、力の入れ具合には差があると思います。
上田慎一郎氏1984年滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。 2010年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。現在までに8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。2015年、オムニバス映画『4/猫』の1編「猫まんま」の監督で商業デビュー。長編映画『カメラを止めるな!』が大ヒットを記録。10月には映画『スペシャルアクターズ』が公開予定。

徳力 上田監督ほど、きちんと運用している方は見たことがないです。

上田 僕の場合は、もともと文章を書いて発信することが好きなんですよ。アメーバブログを書いていた時代に何度か炎上も経験しましたが、ユーザーからのフィードバックを楽しんでいました。
 
『カメラを止めるな!』公式Twitter

徳力 
ちなみに、ブログではなぜ炎上したんでしょうか。

上田 むかし、ある出版社と共同出版という形態で僕が165万円を支払って、SF小説を出版したんです。その出版までの過程、例えば、編集者とのやり取りを包み隠さずにブログに書いていたら、読んだ人から「出版社のやり方が悪どい」「あたなは騙されている」とコメントがあって。

出版形態は法的に問題ないですし、僕は悪事を暴くというつもりでブログを書いていたわけではなく、日記感覚で素直に書いていただけだったんですが・・・。

徳力 本人が納得していたので、別に良かったわけですよね。

上田 はい、でも僕が「騙されていないですよ」と書いたら、「騙されている」と一日に100件以上のコメントがきました。2ちゃんねるにも「騙されている人がいる」とスレッドが立って、盛り上がっていました(笑)。

徳力 炎上を経験すると、発信することに懲りて辞めてしまう人も多いのですが、上田監督が乗り越えられたのは、なぜですか。

上田 僕のそばに炎上を笑い話にしてくれる仲間がいたからでしょうか。僕は誰かと同居している期間が長かったんですよ。それに、批判だったとしても何らかのリアクションがあった方がクリエイターとしては、ありがたいと思っています。

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