トップマーケターが語る2021年の展望 #特別編

横山隆治氏が語る、2021年の広告業界【展望】

 新型コロナウイルスの影響を大きく受けた広告業界は、2021年どのように変化していくのでしょうか。インターネット広告の黎明期から業界を牽引してきたデジタルインテリジェンス 取締役の横山隆治氏に展望を聞きました。
 

テレビCMに大きな変化が起きた2020年


横山隆治 Ryuji Yokoyama
デジタルインテリジェンス 取締役
1982年、青山学院大学文学部英米文学科卒。同年、旭通信社入社。1996年、インターネット広告のメディアレップ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムを起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2001年、同社を上場。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。2008年、ADKインタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。2010年9月、デジタルコンサルティングパートナーズを主宰。企業のマーケティングメディアをPOEに再整理するトリプルメディアの考え方を日本に紹介。主な著書に『CMを科学する』(宣伝会議、2016年)、『新世代デジタルマーケティング』(インプレス、2015年)など。

 2020年を振り返ると、本格的にデジタル化が進んだと感じる1年でした。

 テレビメディアの観点では、2月より日本テレビ・テレビ東京・フジテレビ・TBSなど一部の民放局によって「SAS(スマート・アド・セールス)」がスタートし、オンラインでテレビCMが買い付けられるようになりました。

 しかも番組を1本単位から選んで申し込みできるようになり、バイイングは広告会社を通してですが、広告主が直接プランニングすることも可能になったわけです。大型の出稿主は今までの慣習が根強いですが、BtoB企業など比較的新しい広告主が利用している様子が伺えます。

 そうした流れが出てきた背景には、テレビ視聴者の全体数が減少していることに加えて、高齢層と若年層の視聴者数の差が著しく開いてしまっているという問題があります。前々から言っていることですが、テレビCMをリンゴに例えると、女子高生ひとりにリンゴを1個あげるために、おばあさんに6個、お母さんに3個と合計10個のリンゴを出さないと、女子高生にはあげられない状況なのです。

 テレビ業界全体が縮小傾向にあったところに、さらに新型コロナの影響を強く受けました。ドラマやバラエティの制作が滞ったり、活動を制限されたタレントが新しい収入源を求めてこぞってYouTubeに進出したりしていますよね。この状況が後のテレビ業界に面白い状況を生むのではと思っています。

 もっと大きな視点でいうと、2020年は「人が仲介するという価値」が問われるエポックメイキングな年になったのではないかと考えています。リモートでも仕事ができることが分かったのだから、それに向けてメディアも手売りからシステマティックなプランニングとバイイングに移るきっかけになりました。

 米国のトレードデスク社が成長しているのも、コネクテッドテレビによってテレビとデジタルの広告枠の買い付けをオンラインで行っている点が評価されているからです。株価にも期待があらわれているのか、社員数が1000人少しの会社にもかかわらず、同社の時価総額は日本円にして2兆円を超えています。

 少ないGRPでも適切な場所・タイミングで入れることによって効果が出ることから、そうしたテレビ広告の発注は今後、さらに増えていくでしょうし、本格的にテレビとデジタルの力関係が変わってきたことが伺えます。

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