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大谷選手への伊藤園の「手紙」が、世界60新聞に一斉掲載された裏側【緊急取材:マーケティング本部長志田光正氏】

 

「お~いオオタニサン!」に大注目

  2024年4月30日、伊藤園の緑茶飲料ブランド「お~いお茶」がロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手に向けて「お~いオオタニサン!」とエールを送る「手紙」が、日本経済新聞などの全国紙や、北海道新聞から琉球新報まで全国40紙以上の地方紙に一斉掲載され、多くのメディアやSNSなどで注目を集めた。野球人口が多い米国の「NY TIMES」や「LA TIMES」、韓国、オーストラリアなどの新聞各紙にも掲載され、掲載紙は国内外で60紙以上に及んだという。日本語版では、球場にひとり(1本)たたずむ「お~いお茶」のボトルの背後が映され、「いつの日も 僕のそばには お茶がある」と大谷選手と思しき人物の一句が印字されているという粋な演出も光った。



 同社は同日付けで大谷選手とグローバル契約を締結したと発表し、本人や関係者にいつでも契約対象商品を届けると宣言。大谷選手は日本にいた頃から「お~いお茶」を愛飲しているといい、伊藤園グループのホームページで一斉に立ち上がったスペシャルサイトでは、「アメリカの生活でも大切な相棒となっています」という本人のコメントが公開された。今後、「お~いお茶 グローバルアンバサダー」として、同社と共にさまざまな企画に参加していく。

 「お~いお茶」は伊藤園の主力ブランドとして今年発売35周年を迎え、累計販売本数は430億本を突破している。海外でも40を超える国・地域で販売しており、北米や東南アジアを中心にファンを拡大中。今回の大谷選手とのグローバル契約と、世界規模の広告キャンペーンは、同ブランドの世界展開拡大への並々ならぬ意気込みのあらわれとみられる。

 Agenda noteは伊藤園 マーケティング本部長 執行役員の志田光正氏に緊急インタビューを実施。同社が「手紙」に託した想いと、今回のプロジェクトの背景を聞いた。
 

「認知」ではなく「理解」を


プロジェクトのチームメンバーと話す伊藤園マーケティング本部長 執行役員 志田 光正氏(右列中央)

―― 大谷選手とのグローバル契約に至った経緯を教えてください。

 大谷選手が「お~いお茶」を愛飲してくれているという話があり、全てはそこから始まりました。「お~いお茶」は日本に比べると、米国本土ではまだ普及しきれていないのですが、そのような環境でも大谷選手が飲んでくださっているということは、もしかしたら馴染み深い日本のお茶がお役立ちしているかもしれない。このことは社員一同にとって、大きな励みになっていました。 また、当社は創業60年を迎え、これからの60年に向けて「世界のティーカンパニー」を掲げています。それは、もちろん海外事業の売上を伸ばすという目標もありますが、各地域のお茶文化を知り、茶葉のアップサイクルなども含めてお茶事業の持つ可能性を世界に広げていくことをテーマとしています。今年4月には農作物やプラスチック製品の規制が厳しいヨーロッパでも「お~いお茶」を生産・販売拡大するべく拠点を立ち上げました。国内外でお客さまとの接点を増やしていきたいというタイミングでもあったのです。

 これらの経緯から、伊藤園として、「お~いお茶」を愛飲いただいている大谷選手を応援しながら、共にお茶文化を国内外に広めていきたいという構想が膨らみ、ご快諾いただいた次第です。もちろん実際の契約に至るまでには、契約ごとですので話し合いは長期間に及びました。

―― 今回の広告手法を選ばれたのはなぜですか。

 今回はマーケティング本部のみならず、広報部や国際本部、情報管理部など複数部署が関わるプロジェクトでした。正直、マーケティング本部だけで考えていたら、さまざまな方法が考えられる中、伝統的な媒体である新聞で国内外60紙以上に全面広告を打つ、という選択にはならなかったかもしれません。これまで伊藤園で経験したことのないものでした。 ただ大谷選手に対しては、私たち社員が心から「応援したい」という想いを強く持っていました。朝のニュースで大谷選手がホームランを打ったことを知ると、喜び、その日の励みにしていました。紆余曲折ありましたが、大谷選手を応援するあの「手紙」広告は、メンバーの総意として決まりました。素直に、伊藤園として大谷選手を応援する想いを示すことができると思ったからです。あの「手紙」の文面は社員一同、そしておそらくは日本中の多くの方に共感してもらえる内容だったのではないでしょうか。今回は単なるPRとして「お~いお茶」の認知を狙うというよりも、大谷選手への想いと、お茶文化を世界に広めるというメッセージを伝え、理解していただきたいという目的で取り組みました。それに相応しい広告をと、パートナー企業の方々とも議論を深める中で、世界60紙に一斉に手紙を掲載するという形になりました。

―― 反響はいかがでしたか。

 葛藤はありましたが、結果的にはテレビ、新聞、SNS等さまざまなメディアの皆さまが「手紙」広告の背景を含めて注目していただき、多くの方に私たちの想いが伝わったという手応えがあります。Yahoo!ニュースのトップに入ったほか、「大谷さん効果で『お~いお茶』の売れ行き好調」といった記事が出たり、世界的な緑茶ブームについての報道も見られました。読売新聞では翌日のコラム「編集手帳」で取り上げていただきました。私たちの想いを小さな社会現象として評価していただけたようで、チームとしても手応えを感じました。SNS上でも大谷選手の俳句入りのボトルが話題に上り、皆さんの自作俳句合戦にまで発展し、普段お茶をあまり飲まない方々にも響いたのではと思います。大谷選手は情報解禁後、意識的にしてくださっているのかは分かりませんが、連日、クラブハウスに「お~いお茶」を持ち込んでくれている様子がメディアで取り上げられました。想いを受け止めてくださったのかなと思うと嬉しくて、プロジェクトのメンバー全員、ますます大谷選手ファンになりました。

―― 契約によって今後、どんな活動を展開するのでしょうか。

 まずは大谷さんご本人や彼を支える方々に「お~いお茶」をお届けすることなどを通して応援します。そして「お~いお茶 グローバルアンバサダー」としてお茶の良さを、お茶を飲む習慣の減った日本の特に若い世代の方々や世界の人々に伝え、お茶市場を活性化する活動を一緒にできたらと思います。伊藤園では毎年10月1日を「日本茶の日」として、社員がさまざまな場所でお茶の魅力を伝え、みんなで一斉にお茶を飲むというイベントを実施しているのですが、たとえばこのようなイベントに何らかの形で関わっていただくということもあり得るかもしれません。具体的な活動内容については、今まさに話し合いをさせていただいている最中です。まだ、明らかにできないのですが、お茶にあまり興味のない方にも驚いて喜んでいただけるような取り組みをしていきたいと思います。

―― 今回の契約は貴社の海外展開の大きな足掛かりになるのでしょうか。

 まさにその象徴的な取り組みです。当社の代表的ブランドである「お~いお茶」は今年で販売35周年を迎え、既に世界40を超える国・地域で販売されています。コロナ禍では特に米国事業で海上及び陸上輸送といった物流面で少なからず打撃を受けましたが、「お~いお茶」の販売数量は年々増加していますし、5月からヨーロッパでの販売もスタートしました。国内においても、5月1日に東京・新橋(旧新橋停車場)に「お茶の文化創造博物館」と「お~いお茶ミュージアム」を開館しました。これらに加え、大谷選手とご一緒させていただけることで、お茶の良さを日本中、世界中の人にもっと知ってもらい、興味を持ってもらうきっかけをつくっていきたいと考えています。

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