最新ニュースから読み解く、物流とマーケティング #02

Amazonさえ付け入る隙がない、中国「EC物流」の最前線と実態

前回の記事:
家庭の電力データからAIが配送ルートを自動生成し、再配達9割減。進む宅配クライシス対策

訪問するたびに変わる街の「景色」


 中国における「OMO(Online Merges with Offline)」の進化が止まらない。OMOとは、オンラインとオフラインが融合し、消費者がそれらを垣根なく行動していくことを指す。とりわけ中国でのスマートフォンとリアルの融合のスピードは目を見張る。

 筆者は年4回ほど、中国に行くが、そのたびに街の風景が変わっていく。

 中国最大のIT企業であるアリババ・グループ(阿里巴巴)のライバルであるテンセント・グループ(騰訊)は、2011年1月に「WeChat(微信)」を開始。そのアクティブ・ユーザーは2018年に10億人に到達した。さらに2013年8月から「WeChat Pay(微信支付)」というQR・バーコード決済が開始され、一気にキャッシュレス・スマートフォン決済の主役となった。そして、このスマートフォン決済を活用した、様々なOMOサービスが生まれている。



 雨が降るやいなや、街にリヤカーで傘を売るおじさんが登場。リヤカーに貼ってあるQRコードで簡単に決済ができる。今や、お賽銭もお年玉もWeChat Payで払う世界が到来していた。

 次に中国に行ったときは、街中にレンタルサイクルが並び、スマートフォンで申し込めば簡単に自転車を開錠でき、乗りたいときだけ利用できて、乗り捨てOKだった。

 そして、その次に中国に行ったときは、スマートフォンでランチの配達を頼める「ウーバーイーツ」のような会社が山のようにできていた。

 これが数カ月ごとに変わっていく「中国OMO」の景色だ。すでに中国のEC市場規模は2018年に150兆円を超えている。これは日本の10倍以上だ。広大な国でどのようにEC物流が行われているか、今回は中国EC物流にスポットを当てたい。
 

ジンドンの完全無人倉庫、配送の自動化が進む


 中国EC物流では、京東商城(JD.com・ジンドン)を一番に取り上げなければならない。2017時点で中国全土に主要物流拠点が7カ所、さらに405の倉庫を稼働させている。倉庫の面積は900万㎡。実に東京ドーム190個分に相当する。さらに配送拠点は6906カ所、6万7000人の自社社員が配達している。

 最短で発注から5時間後には注文者の元に商品が配達され、全体の平均でも85%が翌日までに配達される。アマゾンが中国では1%未満のシェアしかとれないのは「京東商城(JD.com)」が先行して、アマゾン以上の物流を構築してしまったからではないかと思う。

 昨年、日本のEC物流業界では「JD.com」の完全無人倉庫が話題となった。こちらの動画をご覧いただければ、どれだけ自動化が進んでいるのかが理解できるだろう。
 

 一方で、中国でEC売上がNo.1である「天猫(Tmall)」は、出店型の形式のため、出店各社が自身で出荷し、宅配会社に委託して配送となっている。宅配会社は全部で8社(下記参照)。上海−北京の配送であれば、翌日に届く。
 
筆者作成
 

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