関西発・地方創生とマーケティング #18

「社員であることは半分、辞めることにした」シャープさん

前回の記事:
「毎日そこにいること」シャープさん(山本隆博)
 前編に続いて、フォロワー数が63万人を超えるシャープ公式Twitterの中の人「シャープさん」として、10年近く大阪でつぶやき続けている山本隆博さんへのインタビューをお届けします。次の文章からは、山本さんの発言を語り口調そのままに紹介させていただきます。
 

「会社を少し批判するようなツイート」ができる理由

 
シャープ 山本隆博さん

 組織としては、私はWeb広告などを担当する部門に在籍していますが、そこに自分はあまり関与しないし、さらに言えば会社を外からしか見ないようにしています。

 常にやっているのは、今シャープに何が起こっているのかを外から見ること。世間の人がシャープのことをどんなふうに言っているのかをリアルタイムに見ています。

 シャープという会社とお客さんとの真ん中に居ようと決めているので、会社とは心理的、物理的にもなるべく距離を置くようにしています。Twitterを始めた当初からシャープ社員であることは半分辞めることにしたんです。実は、社内の電話帳からも連絡先を消したこともあります。

 だから、会社を少し批判するようなツイートもできるんです。
 
 

今日は眠れるかな、のツイートがもたらした変化


 会社が怒るのは、「良くないことが起こるのではないか」と心配するからであって、そもそも未知なことをやる私には、それが起こらないと証明することは、怒られている時点では不可能です。

 だから、やってみたけど良くないことが起こらなかったよ、という事実を積み上げるしかありません。

 私も最初はTwitter上の会話を禁じられていました。1年くらいひたすらリリース原稿を140文字でリライトして流していた時期があったんです。

 転機になったのは、リストラが発表されたとき。

 そのときシャープにTwitterアカウントがあることが注目されて「あぁ、こういうときはTwitterアカウントが世間との窓口になるんだなぁ」と単純なことに気づいたんです。

 そして怖いと思うのと同時に「なるほどな」と思いました。じゃあ、この世間に開かれた窓を有益に使わないといけないなと考えたわけです。

 それで会社の中の空気をひとりの社員が言ったという形でツイートしてみようと、上司に相談せずに勝手にやってみたんです。
 

 すると、今までに見たことのない数のリツイートがついて、「リストラなんてけしからん」というコメントよりも、応援の声がたくさん寄せられるようになったんです。

 このとき、それまでは体温が感じられなかったシャープのアカウントの中にも当たり前のように労働する人間がいる、ということが伝わったのだと感じました。

 加えてTwitterはパーソナルなツールで、企業もパーソナルに歩み寄ることがマナーだと気づかされました。botでもなく、広告のようにチームの制作でもなく、ただのいち社員がやっているんですよ、と。

 誰に教わったわけでもなく、試行錯誤しながらここまで来ました。アカウントを始めたときは、となりに座っている同僚が親切にしてくれて、会社からのノイズをうまくさばいてくれていたのですが、彼も数年前に辞めたので今はひとりです。
 

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