OMO時代のリテールデジタル戦略 #01

ECがないと店舗の売上が減る時代。オムニチャネルとOMOの違い、理解していますか?

 はじめまして。唐笠 亮(からかさ りょう)と申します。ショッピングセンターPARCOをはじめとする商業施設やリテール企業のオムニチャネル・デジタルシフトを推進・支援しています。本連載では、リテールのデジタル戦略におけるテーマやキーワード、事例を取り上げ、日頃感じている現場での感触なども合わせ、考察を深めていきたいと思います。
 

オムニチャネルとは? OMOとは?


 「OMO(Online Merges with Offline)」というキーワード、最近よく耳にしますよね。O2O、オムニチャネル、ビッグデータ、DX(デジタルトランスフォーメーション)……。消費者の情報収集行動や購買行動の変化に合わせて、リテールのデジタル戦略におけるテーマやキーワードも変わってきました。

 私が様々な企業のデジタル戦略をお手伝いしている中で、近頃では「“OMOオムニチャネル”を実現するにはどうしたら?」という聞き方をされたり、OMOと掲げられたプロジェクトが実際にはオムニチャネル的な取り組みであったり、オムニチャネルとOMOが同一視されていると感じることが多くなってきました。

 オムニチャネルが言われ始めたのは、2013~2014年頃からだったと記憶していますが、当時からオムニチャネルというキーワードは茫洋(ぼうよう)としていて、定義が難しかったように思います。



-オムニチャネルって、つまりどういうこと?

 リアル店舗とEC(※)の顧客や販売、在庫データを統合すること? それとも、リアル店舗とECでのサービスを同質に近づけること?

 そうした考えのもと、オムニチャネル対応を進めてきた企業も少なくないと思います(※便宜上、ここでは「他のリアル接点も含めた意味の“リアル店舗”」と「他のデジタル接点も含めた意味の“EC”」の2つで話を進めます)。

- それで、オムニチャネルは実現できてきたのか?
- そして、ここにきてOMO。オムニチャネルとは違うの?


 まず、オムニチャネルから解説します。「リアル店舗とECをシームレスに繋ぐこと」といった手法的なまとめ方をされることも多いのですが、繋いでどうするかが肝心だったり、繋ぐ以前のハードルも多かったりすることから、個人的にはもう少し拡張して次のように捉えています。
 
オムニチャネルとは、リアル店舗とECとの連携を強化することによって「リアル店舗もECも、そのときの都合に合わせて便利な方のチャネルを利用したいお客さま」に一貫性のある対応・サービスの提供をできるようにし、またリアル店舗とEC双方を駆使してチャネルを行き来するお客さまの購買行動に積極的に関与することで、どちらか単体ではなく事業全体をスケールさせようということ。

一方でOMOについては、次のように捉えています。
 
OMO (Online Merges with Offline)とは、“OMO時代”とも言われるようにオンラインがオフラインを包含した状態そのものだったり、オンラインとオフラインの融合を前提とした戦略、オンラインを軸にして、これまで分断されがちだったオフラインを融合すること。

 書籍『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』藤井保文、尾原 和啓著(日経BP、2019年)で提唱されている「ビフォアデジタル/アフターデジタル」の世界観と合わせて考えると、「ビフォアデジタル=リアルとデジタルが分かれている時代の考え方が“オムニチャネル”」で、「アフターデジタル=リアルがデジタルに包含されている時代の進化した考え方が“OMO”」と言えるかもしれませんね。
 
出典:ビービットのオフィシャルブログ|一兆スマイル新聞

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録