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コロナ禍で伸長する通販。大事なのは顧客から「長く愛されること」―グランドビジョン 中尾賢一郎

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛によってEC・通販ビジネスの需要が増し、企業にはダイレクトマーケティングの知識やスキルが求められています。とはいえ、すぐに実行しようとしても、ノウハウがなく難しい状況があるのも事実。そこでダイレクトマーケティングに取り組む企業にいま何が求められるのか、「ダイレクトアジェンダ」のカウンシルメンバーであり、福岡を拠点に全国の通販・D2C(Direct to Consumer)事業者の支援を行うグランドビジョン 代表取締役社長の中尾賢一郎氏に聞きました。
 

簡単に始められるが、本当のノウハウは広まっていない


――新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ダイレクトマーケティング領域にどのような変化が起きていますか。   
中尾賢一郎氏
グランドビジョン 代表取締役社長
1975年生まれ。鹿児島県出身。大学卒業後にコピーライターを志し広告企画会社に入社。その後、電通九州に転職し、通信業界、商業施設、映画、酒類、自動車メーカーなどの販売促進プロデュースや、官公庁のイベントプロデュースやイベントプロデュースなどを担当。2011年グランドビジョンを創業。

 ダイレクトマーケティングのニーズが、さらに高まっていると感じています。実際、今の時代に最も適した販売手法ですが、一方でそのノウハウが広がっていないことが課題です。通販ビジネスは比較的簡単にスタートできますが、今は商品がよほど差別化されているか独自性がなければ、成功は難しく参入してもうまくいかない企業が多いんです。

 当社は最近、仙台市での講演がきっかけで、東北地方からの相談がすごく増えているんですが、やはり多くの企業が悩んでいます。というのも、通販新聞のデータによると、九州には売上が30億円を超えている通販事業者が26社もあるのに、東北にはアイリスオーヤマなど2社しかない。東北にもいい商品はたくさんあるはずなのに、なぜこんなに通販事業者が育っていないかと言うと、おそらくノウハウを持っている企業が少ないからでしょう。

 もともと九州では辛子明太子のふくやが通販ビジネスで成功し、そのノウハウが他社にも共有される形で広がっていきました。そうしたノウハウが全国に広がれば、地域に雇用が生まれ、元気になる。私はそれがダイレクトマーケティングの魅力だと思っているんです。
 

最も重要なのは、「エバーブランディング」


――D2C(Direct to Consumer)という言葉も注目を集め、多くの企業が通販領域のビジネスに参入しています。成功している企業とそうでない企業には、どこに差があるのでしょうか。

 私はブランディングがもっとも重要だと思っています。もちろん商品力があることが大前提ですが、その商品の見せ方や独自性、ネーミング、広告の出し方など全てをまとめるブランドが大事です。さまざまな商品のランディングページを見ていても、どれも同じに見えてしまうことがありますが、特徴を出していかなければ魅力は伝わりません。

――ブランディングという言葉の解釈はさまざまですが、中尾さんはどのように定義していますか。

 私は単にブランディングと言うのではなく、「エバーブランディング」として顧客に支持され続ける、つまり売れ続けることが重要だと定義しています。ブランドは社会とつながっています。社会にいろいろな変化が起きれば、生活者も変わります。いまこの時代にどういうブランドとして世の中に価値を提供するのがベストなのか、常に考え続けることが大事です。

 ちなみに、私はD2Cのことも「D4C」と呼んでいます。4というのは「for」。つまり“顧客のために”という意味です。意味を少し変えるだけでも、物ごとの捉え方や進め方が変わるため、そういう思いを持って取り組んでいこうと宣言しているのです。当社がコールセンターのことを「エンゲージセンター」と呼ぶのも同じで、社内外にエンゲージメントを大事にするコールセンターだと示しているんです。

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