マーケティングの現場から考える「5年後の実際」 #08

サービスとプロモーションが深く結びつく時代、「体験価値」の再定義が必要になる

前回の記事:
あなたは「ナラティヴ」という概念を、マーケティング文脈で説明できますか?
 

見直される「体験価値」の重要性


 コロナ禍は、従来の店舗などのリアルな「場」を前提とした物質的・空間的な体験価値の提供を阻んでいる。この問題への対応は短期的なものなのか、不変的なものなのかは誰にも分からないが、現在多くのサービスでは、オンラインを活用した価値提供、オンラインならではの新たな価値開発に躍起になっているのではないだろうか。

 この状況を、数多くの業界に深刻なダメージをもたらす厄災として重く受け止めながらも、筆者はいち消費者としてはポジティブな見方もしている。それは、デジタルアレルギーだった旧態依然の業界が一気に変わる期待であり、新たな「体験価値」の創造を目指したマーケティングの進化で、より便利で快適な顧客体験が得られるようになるのではないかという期待である。

 オフラインが強烈に制約を受けている今だからこそ、改めて「体験価値」とは何かを考え、行動に移す時ではないか。そのためのヒントが、日本中が本格的なコロナ禍に直面する少し前の2020年2月上旬、宮崎県で開催されたマーケティングカンファレンス「ダイレクトアジェンダ2020」(以降はDA20と表記)にあった。
 
2017年の初開催から、今年で4回目を迎えた「ダイレクトアジェンダ(DA20)」。会場には直販・通販事業に携わるトップマーケターを中心に、過去最多となる240人の参加者が集まった。
 

DA20が投げかけた、体験価値のインパクト


 DA20に参加し、体験価値の重要性が語られるほど、マーケティング活動全体へのインパクトの大きさを考えさせられた。例えば4Pにおけるプロダクト・サービス開発の担当者と、プロモーション・コミュニケーションの担当者は、部門の壁で隔たれることなく限りなく脳内を一体化しておかなければならないことも気づきのひとつだ。どういうことかと深掘りする前に、「体験価値」の重要性を事例も踏まえて振り返りたい。

 DA20の結論は、ラップアップセッションのレポート記事が分かりやすい(詳細は、こちら)。簡単に振り返ると、現代の多くの市場が商品カテゴリを問わず、「商品の性能や品質だけで差別化するのは非常に難しくなってきている」という状況があり、デジタルツールの発達・整備を背景に「付帯サービスやコミュニケーションが、商品とともにブランドの競争力を決する重要な要素」になってきている。そのため、今は「商品+サービス」でユーザーの体験をつくる時代になっている、という話だ。

 また、全体のテーマである「NARRATIVE」については、筆者の前回記事(詳細は、こちら)をご確認いただきたい。ひとことで言ってしまうと、「ナラティブな外部環境(一方的にブランドから与えられる物語ではなく、消費者が感じている主観性を語る場)への変化に対応する鍵は、体験価値を上げること」であり、そのことは、結果としてLTVを高めることに繋がるということだ。体験価値の具体的なつくり方は、私も参加したLTVのセッションでも深掘りされた。



 このセッションでは、住み替え(LIFULL)、車の売買(IDOM)、航空機の利用(JAL)という、人生に何度とない体験を提供する事業会社が集まった。EC中心に発展してきたLTVの概念とはまた違い、ライフイベント系は購入頻度のコントロールが出来ない。ユーザーのタイミングに寄り添うことを前提として、超長期でLTVを考えるというユニークな共通点がある。次から具体例を紹介していきたい。

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