渋谷PARCO1階 BOOSTER STUDIOとは
渋谷PARCOの1階には、物が並んでいるのに販売をしない「BOOSTER STUDIO」という店舗があります。

パルコとCAMPFIREが共同運営するクラウドファンディング「BOOSTER」と連動し、出品者に小売向け店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を利用した店舗内回遊データをフィードバックする仕組みです。以前、こちらの連載で紹介したb8ta(ベータ)と似た仕組みの店舗です。
参考:Googleも出品。知る人ぞ知る、店頭の商品が売れなくても利益が出る米国の注目店舗「b8ta」
b8taとの違いを挙げると、b8taは一部商品をその場で購入できたり、店内のタブレット端末からEC購入できたりが可能であるのに対し、BOOSTER STUDIOはその場で買うことができません。
今月上旬に開催されたリテール領域のマーケティングカンファレンス「リテールアジェンダ」でパルコ ソーシャルイノベーション事業部 部長の佐藤貞行さんと登壇する機会があり、その場で「なぜ買うことが完全にできない店舗を1階に置いたのか」と質問しました。

佐藤さん曰く、売る・売らないに関しては、プロジェクトメンバー内での論議がかなりあったそうです。そして協議の結果、売れる状態にすると、どうしても売ることが目的の接客になってしまうので、まずは「あえて売らない」という決断をしたそうです。
実際に店に行くと、スタッフの接客が「売らんかな」ではないため、高額な超高性能イヤフォンの試聴などを自然に勧めていましたし、来店客も「買えと言われないかな…」というプレッシャーがなく、接客を自然に受け止めていました。
また、b8taと比べて、完成前の製品展示も多いです。反応を見ながら、製品開発していくこともできるわけです。

注目すべきは、クリップで物を挟むと、その物の色を音声で伝えてくれることで、目が見えない方でも物の色や水分の量がわかる「みずいろクリップ」といった商品も展示されていたことです。

テナントに貸せば、最も高い家賃が取れる1階で、パルコが自らソーシャルグッドな商品の啓蒙を行う。ここに、パルコの「リニューアル店舗は、渋谷という場所からメディアとして情報発信する『場』である」というこだわりを強く感じます。
次回は、中川政七商店旗艦店が渋谷スクランブルスクエアの11階にある理由について書いてみます。
- 1
- 2