トップマーケターがおすすめ書籍を紹介するAGENDA Note.の連載「視野が広がった、視座が上がった、視点が増えた1冊」。今回は「特別編」として、3000人超の研究者や実務家が所属する日本マーケティング学会で投票形式で選ばれた「日本マーケティング本 大賞2025」から、最新のマーケティングシーンを代表する受賞3作品を紹介する。

 日本マーケティング学会は10月12日、第8回「日本マーケティング本 大賞2025」の受賞書籍を発表し、栗木契氏の『エフェクチュアル・シフト:不確実性に企業家的機会を見いだすマーケティングの探求』(千倉書房)が大賞に輝いた。準大賞には音部大輔氏の『君は戦略を立てることができるか:視点と考え方を実感する4時間』(宣伝会議)と久保田進彦氏『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)が選ばれた。

「日本マーケティング本 大賞」は、1年間に日本で出版されたマーケティングに関する書籍のうち、その理論や実践の普及に貢献したものを学会員が投票形式で選出するアワード。今回は9作品がノミネートされ、3作品が受賞した。
 

不確実性の高い時代を勝ち抜くための指南書


エフェクチュアル・シフト:不確実性に企業家的機会を見いだすマーケティングの探求
 

 不確実性を前提としたビジネスアプローチであるエフェクチュエーションの概念を中心に、ベンチャーから既存企業まで幅広い事例を紹介した書籍。学会員からの推薦理由では「不確実性が高まる時代において、計画的戦略と実験的、共創的アプローチの組み合わせ方を具体的に示しており、研究者と実務家の双方に価値を提供した」「平易な解説と豊富な事例により、理論と実務を架け渡し、企業活動の突破口を示している点も大きな意義」などとして、不確実性高まる現代において大賞にふさわしいと評価された。
 

「戦略」の本質に立ち返る実践の書


君は戦略を立てることができるか:視点と考え方を実感する4時間
 

 マーケティングやブランディングに不可欠な戦略構築を、従来の経営戦略とは異なる視点から平易に解説した実践的な1冊。推薦理由として「戦略立案をすべてのレイヤー、あるいは一般の人々にとっても活用可能な考え方として提示」「戦略立案から実行までのプロセスを整理し、幅広い層に資源活用と実効性向上のヒントを与える」「現場の意識改革についても示唆に富み、戦略の本質を原点に立ち返って考えさせられる」などと評価された。

※執筆の狙いを聞いたアジェンダノートの独占インタビューはこちら
【音部大輔氏 新刊発売記念インタビュー】君は「戦略」の本当の立て方を知っていますか?
 

ブランド力低下への処方箋


ブランド・リレーションシップ
 

 著者の長年にわたるブランド・リレーションシップ研究を体系的にまとめた1冊。推薦理由では「消費者とブランドの関係性を学術的かつ実践的に提示するとともに、マネジメントへの具体的な枠組みを提案」「豊富な実証研究成果はブランド研究やマーケティング研究の発展に寄与するだけでなく、ファン・マーケティングをはじめさまざまな戦略に示唆を与える」「現代におけるブランド力低下への処方箋」などと評価された。

 その他のノミネート作品は以下のとおり。
 
  • 石井淳蔵氏『岡田卓也の時代:公器の理念が支えた静かなる流通革命』(碩学舎)
  • 渡邉裕也氏『企業内リードユーザー:小売店舗販売員がもたらすイノベーションの解明』(碩学舎)
  • 庭山一郎氏『法人営業は新規を追うな:重要顧客と最高の関係を築くABM』(日経BP)
  • 坂田隆文氏『マーケティング教育学』(文眞堂)
  • 杉光一成氏『マーケティングの最強ツールは知財である』(中央経済社)
  • 久保田進彦氏『リキッド消費とは何か』(新潮社)

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