成長企業から考える「マーケターの定義」 #03

広告会社からLINEに転職して気づいた、半歩先を照らしていく「戦略プランニング」

前回の記事:
「戦略と戦術」のラダー構造を上下に行き来できる人材こそ、マーケターである

事業会社の戦略プランニングを理解するために

 こんにちは。前回に引き続き、今回も戦略をテーマに書きたいと思います。

 僕は社会人になってから最初の10年間、広告会社のストラテジックプランナー(以下:ストプラ)として様々な業種や商品の課題解決を担ってきたのですが、その間に行なっていた戦略プランニングと、Indeedで今取り組んでいる戦略プランニングには、ある変化が生じていると感じています。


 その変化が僕自身の経験の蓄積によるものというよりも、消費財のマーケティングとデジタルサービスのマーケティングにおいて求められる戦略プランニングの機能のさせ方が違っているということなのだと思っています。

 僕は広告会社出身ということもあり、広告会社と事業会社が理想的な協業関係を築けることを望んでいます。そして今回の内容は、広告会社のストプラもしくは営業担当者が、事業会社(特にデジタル系の会社)における戦略プランニングを理解して、どのようにマーケティング活動に関与すべきなのかという命題に取り組む際の一つのヒントになれば良いと思っています。

 もちろん普段、施策の実施と振り返りという高速PDCAプランニングの中で忙殺されていて、マーケティングの戦略面を強化したいという事業会社の課題解決にも役立てばよいと思っています。

 

戦略立案を担う通称「ストプラ」の正体とは

 まず本題に入る前に「そもそもストプラって何者なのか?」ということから話を始めたいと思います。

 僕は広告会社時代、「戦略担当です」と言って名刺交換することが多かったのですが、「戦略企画書」などの形を持った、わかりやすいアウトプットをつくることは、それほど多くなく、職種の意味どおりストラテジックなプランナー、つまり戦略“的”な思考を持つ企画者として、様々な業務を担っていたという感覚が強いです。

 “ストラテジー”プランナーではなく“ストラテジック”プランナーというネーミングが妙であり、“戦略的”なという捉え方が戦略を捉える上でとても重要だと思っています。これは戦略はつくって終わりではなく、機能させてこそ意味があるものだからです。

 この辺りの話は2回目にも書いているので、そちらを見ていただければと思いますが、戦略は戦術とセットになって初めて機能するものです。つまり広告会社におけるストプラとは、クリエイティブやメディアという具体的なアウトプットや売り物を提案する際に、それらを機能させるためのロジックやストーリーを描く人だと言えます。

 では、企業のマーケティング活動において、戦略を機能させるというのはどういうことなのでしょうか。それは簡単に言うと、自社商品が戦う市場を規定し、その市場においてどのようなポジショニングを取れば自社商品にとって理想的な状態になり、そのために獲得すべきターゲットはどんな人で、その人に何を価値として訴求するのかを決めて施策を設計し実行に移すことになります。ここで一番重要なのが、市場の中でどのような存在になっているのが競合に対して差別化が図られている状態なのかという視点です。

 よく陥りがちなのですが、競合を分析して足りない部分を補うアプローチは、同質化するだけで独自ポジションの獲得にはならないので注意が必要です。僕の尊敬する大先輩が「ストプラとは、ビジョンクリエーターである」とおっしゃっていましたが、これはストプラという職種の価値の本質をスバリと言い当てており、ストプラ職自体を広告産業の中で“マーケティングする”素晴らしいビジョンだと思います。

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