伊東塾 #02

「今朝、オフィスに向かう途中で見た看板の色を覚えていますか」脳のオートパイロットを解除せよ

液体洗剤「アリエール」はなぜヒットしたのか


 P&G時代に衣料用洗剤「アリエール」によって、粉末が中心だった日本の洗剤市場に、液体洗剤を浸透させることに成功しました。

 当時の「アリエール」は、カテゴリーシェアが下落し、打つ手がない状況でした。そんな中、当時のトップシェアブランドの花王「アタック」が洗剤の溶け残りを解消する技術革新を起こした、という話を聞きました。

 ならば、粉末である「アタック」が一番足かせになる戦略を考えることからスタートしました。「溶ける粉末洗剤」とは、言い換えれば不溶性の溶けにくい原料が入っているということです。言い方は悪いですが、相手が消費者に嘘をついているかのように感じる方法をとったのです。



 消費者は、衣服に「粉が残るのが嫌だ」と潜在的に考えています。そのインサイトをつき、「粉末と液体、どちらがよく溶けますか」「粉末洗剤、あるいは洗剤カスが服に残るものと、残らないものどちらがいいですか」など、消費者が液体洗剤に対して、絶対にNOと言えない命題をつくりました。そのことで、「操縦モード」に切り替えることを狙ったのです。

 その一方で、重要なパートナーである小売・流通業のインサイトも考えていました。それは洗剤市場が長年に渡ってイノベーションが起きておらず、価格競争が激しく利益が出にくくなっていたということです。そこで液体洗剤の詰め替え品を販売すると、小売業にも利益が生まれる仕組みをつくりました。

 これらの施策の結果、消費者から「アリエール」の支持を獲得し、液体洗剤という市場を形成することに成功しました。
 
<アリエール成功のポイント>
 洗剤の粉が衣類に残るのが嫌だというインサイトに対して、「粉末と液体、どちらがよく溶けますか」という命題を突きつけて、主婦の頭を「操縦モード」に切り替えることを狙った。
 

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