マーケティングで社会課題を解決できるか #04

リクルート「男性の妊活」への挑戦、誰かを悪者にしないプロモーション戦略

前回の記事:
「お前の趣味に、お金を使えない」リクルートでの精子ビジネス立ち上げをどう説得できたのか

男性が初めから妊活に取り組むメリット

 リクルートが提供する「Seem」は、専用キットとスマートフォンのアプリで精子の濃度と運動率を測定できるサービスです。使ってもらいたいのは、将来子どもが欲しいと思っている男性や現在妊活中の男性。「男性の妊活」という新しいマーケットをターゲットにしています。



 これまでの妊活は、まず主体的に取り組むのは女性でした。妊娠・出産は、女性しか当事者になれないため、男性が当事者意識を持ちにくいのは仕方ない面もあります。

 しかし、男女ともに加齢により妊娠のしやすさが低下しますし、不妊の原因の約半分が男性にあることも明らかになっています。平均の初婚年齢が男女ともに30歳前後まで上昇している現代においては、はじめから男性も一緒に妊活に取り組むことが必要です。

 「男性の妊活」というこれまでにないマーケットにおいて「精子のセルフチェックサービス」という新しいカテゴリーの商品認知を獲得するのは、かなり難易度の高い挑戦です。
 

まずは「信頼づくり」から始めた

 「精子をセルフチェックできるサービス」と言われてもイメージできる人は少なく、Seemの価値である「自宅で精子の状態を測定できる」という手軽さも、ともすると結果の信頼性に不安を感じられてしまう可能性もありす。

 そこで専門家に協力してもらい、信頼性を客観的に評価するところからスタートしました。Seemは医療機器ではありませんが、測定の結果は大きな意味を持ちます。測定の精度を確認するため、男性不妊専門医の協力のもとで臨床試験を行いました。

 200名の患者さんにご協力いただいて実施した臨床試験では、医療機関受診の手前で使用するスクリーニングチェックとして有用であることが確認できました。その結果を論文にまとめ、学会発表も行いました。

 そして、最終的には生殖医療の専門学会である日本生殖医学会からも、Seemが目標とする男性参加型の新しい妊活文化の実現に大きく期待するとコメントをもらうことができたのです。

 男性の妊活の領域で新しいサービスを立ち上げるにあたり、はじめに専門家に評価してもらえたことで自信を持って、その後のコミュニケーションを展開することができました。

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