ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #04
けんすうが語る「広告論」 企業は、宗教のコミュニティづくりから学ぶべき
宗教コミュニティが拡大する3つの段階
徳力 けんすうさんのネットの広告についての考えを教えてください。最近、スタートアップ企業がある程度の成長が見込めたら、テレビCMなどのマス広告を使って認知を大きく伸ばすという手法が勝ちパターンになってきていると思います。
けんすう そうですね。ただ、それでは持続的な成長が見込めないため、大手のスマートフォン系のゲーム会社などは、その手法から脱却して「ファンのコミュニティ化」を意識している、と聞いたことがあります。
古川 健介 1981年生まれ。リクルートを経て、nanapiの創業。2014年にKDDIグループ入りしたのち、現在はマンガサービスを手がけるアル代表取締役社長。
徳力 コミュニティは、どうすればできますか。
けんすう 難しいですね。コミュニティはつくろうと思って簡単にできるものではないと思います。そもそもつくろうと思った時点で、その難易度が上がってしまうんです。
昨年12月に発売された前田裕二さん(SHOWROOM 代表取締役社長)の著書『メモの魔力』は読者によるコミュニティが形成されていますが、おそらく前田さんも編集者の箕輪厚介さん(幻冬舎 編集者)もコミュニティをつくろうなんて一切考えていなかったと思います。
前田さんが100万部を販売するという桁外れのチャレンジ目標を掲げたところ、書店員や読者がどう売るかを考え始めて、それがコミュニティになっていったのでしょう。
徳力 つまりコミュニティをつくるのではなく、まずコミュニティが存在する理由をつくることが必要なのでしょうか。
徳力 基彦氏
アジャイルメディア・ネットワーク / 取締役CMO NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。
アジャイルメディア・ネットワーク / 取締役CMO NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。
けんすう はい、その通りだと思います。そういえばIT批評家の尾原和啓さんがこんな話をしていました。
宗教のコミュニティができあがっていくには段階があって、最初は人についていく「教祖の時代」、次にその教えをまとめた「教典の時代」、そして最終的には「教会の時代」になり、その厳かな雰囲気に魅せられて人が増えていくのだと。企業も、この順番を追うべきではないでしょうか。
徳力 たしかに、宗教がコミュニティの原点だとすると、それを参考にするのは大事ですよね。最初は、開発者やブランドマネージャーが苦労を共有しながらファンをつくり、次に製品やサービス自体が教典的な役割を果たしていく、と。
けんすう そうですね。先ほどのシャープのTwitterを例に言えば、中の人の「シャープさん」は教祖だけれど、まだ教典にまでは辿りついていませんよね。シャープの製品が教典となり、最終的にはシャープ製品を持っていること自体に大きな価値を感じてもらえる教会を目指していくということですね。
徳力 ある意味、スターバックスが「リア充」の可視化に成功していることに近いですね。
けんすう たしかにスターバックスも、いろんなカフェがある中で、飛び抜けておしゃれというわけではないですもんね。これはAppleも同じで、Apple製品を持っていると、かっこいいという雰囲気があります。その段階まで企業がいくと、強いんでしょうね。