TOP PLAYER INTERVIEW #13

「投資先を見る目は、広告会社の経営者時代に養われた」日広(現GMO NIKKO)創業者 加藤順彦

前回の記事:
日広(現GMO NIKKO)創業者・加藤順彦 投資家としての流儀 「あなたの言うことが実現したら、誰が損をしますか」
 広告会社の日広(現GMO NIKKO)創業者で、2008年の社長退任後はエンジェル投資家としてシンガポールを拠点に活躍する加藤順彦氏。東南アジアで起業する日本人を対象に出資した会社の数は30社、累計で70社にも及ぶ。事業を始めたばかりのスクラッチやシードなどの段階で投資するというスタイルの加藤氏に、投資家としてのビジョンや日本の広告業界への思い、注目しているテクノロジーなどについて聞いた(第2回/全3回)。
 

この社長に売掛金をつくって大丈夫か


ToGEAR PTE. LTD. CEO 加藤順彦
 1967年 東京都生まれ。小学校2年生から大阪で育つ。1986年 関西学院大学入学。その後、学生企業のリョーマに参画。1989年 ダイヤルキューネットワークに参画。1992年 広告会社の日広(現GMO NIKKO)を創業。2008年 日広をGMOインターネットに譲渡し、シンガポールに移住。著書に『講演録 若者よ、アジアのウミガメとなれ』(ゴマブックス)など。


 日広(現GMO NIKKO)時代は、中小企業の社長を相手に「この人に売掛金をつくって大丈夫だろうか」という判断をずっと行ってきました。何しろ、お客さんは中小・零細企業ばかりで、広告費を回収できないリスクが大きかったからです。

 自分自身が与信機関のような存在で、その会社の業種業態というよりも社長の「人となり」を見ていました。投資家として、人の見極めができるようになったのは、そういった経験の積み重ねが大きいかもしれません。

 それと、社長は「気持ちが折れない人」という点もすごく大事だと思っています。ベンチャーキャピタルのXTech Venturesの西條さん(西條晋一氏)や手嶋さん(手嶋浩己氏)も挫折経験がある40代の起業家に投資したいとおっしゃっていますが、その気持ちはわかります。

 私の投資先の中でも、ビットバンクを起業した廣末紀之さんは、けっこう挫折しているんです。彼の起業は、世界最大級の仮想通貨交換所だったマウントゴックスが破綻した2カ月後、2014年5月です。当時、マウントゴックスを起業したマルク・カルプレスさんは、マスコミにもすごく叩かれていましたし、ビットコインは詐欺だとまで言われていました。そうした中で、ビットバンクが大きく成長できたのは、彼が折れない気持ちを持っていたからです。
 
ビットバンク
 廣末さんとは20年来の友人で、彼から仮想通貨取引所の起業話を持ち掛けられたとき、当時の私は「インチキの延長線上にあるビジネス」と感じました。でも、私からすると、彼が話している内容はとても怪しいけれど、彼自身のことは怪しくない、と思い直して、ビットバンクを始めることにしました。

 そういう意味では、やはり私は事業のソースやジャンルよりも、人間を判断材料に投資先を決めています。

 この人と同じ方向が見られるのか。そして、彼が登ろうとしている山を私自身も自分の夢として見られるのか。そうした価値観や世界観、倫理観が自分にピンと来るかどうかで、ビジネスの成功確率を推し量っていると言えます。

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