マーケターズ・ロード 湖池屋 佐藤章 #04

「次の湖池屋の柱をつくれ!」なんて堅苦しい言い方で、アイデアは出てこない 佐藤章社長

前回の記事:
キリン時代に体得した、業界を超えて通じる「掟(おきて)」 湖池屋 佐藤章社長
 キリンで「FIRE」「生茶」など、ヒット商品を次々手がけるマーケターから、キリンビバレッジ社長に就任、2016年には一転、老舗スナックメーカー 湖池屋のトップに就いた佐藤章氏。飲料からスナック菓子へと活動の場が変わっても、市場にインパクトを与える施策を連発し続けている。

 キリン時代に培ったマーケターとしての考え方やスキルが、現在の佐藤さんの経営スタイルにどのように生かされているのか。そして、現代に求められるマーケター像とは何か、話を聞いた(第4回/全4回)。
 

農業分野でのイノベーションが求められる


湖池屋 代表取締役社長
佐藤章(さとう・あきら)
1959年、東京都生まれ。82年、早稲田大学法学部を卒業後、キリンビールに入社。97年にキリンビバレッジ商品企画部に出向。99年に発売された缶コーヒー「FIRE」を皮切りに、「生茶」「聞茶」「アミノサプリ」など、年間1000万ケースを超える大ヒットを連発。2008年にキリンビールに戻り、九州統括本部長などを経て、14年にキリンビバレッジ社長に就任。16年にフレンテ(現・湖池屋)執行役員兼日清食品ホールディングス執行役員に転じ、同年9月から現職。

 これからの時代、企業・ブランドが選ばれる存在であり続けるためには、マーケティングだけでなく、イノベーションが求められると思います。そしてイノベーションを起こす上で、マーケターの素養は大いに生かせると考えています。

 イノベーションの起点は「こういう時代だから、こういうものが求められるんじゃないか」という仮説です。

 新生・湖池屋をスタートさせたときは、「日本人はグローバル社会の今だからこそ、あらためて国産原料を求めているのではないか」という仮説を打ち立てました。だから、新生・湖池屋の象徴となるブランド「KOIKEYA PRIDE POTATO」では、原料となるじゃがいもは100%国産を守り抜くことを決めました。
 
「本格濃厚のり塩」「芳醇-重ね茶塩」

 それを実現するためには、北海道・東北・関東・九州と全国の農家を訪ねて、作付面積を広げてもらうよう頼んで回る必要がありました。また、地域によって育ちやすいじゃがいもは異なり、すべてがポテトチップスに適しているとは言えません。

 美味しいポテトチップスを安定的に供給するために必要な品種改良を行うには、7年近くの月日がかかります。さらに量産するには、そこから3年は覚悟しなければならない。農家とタッグを組んで、農業にイノベーションを起こす必要があるわけです。
 
湖池屋のポテトチップス用のじゃがいもを収穫

 農業のイノベーションは、容器や広告とは異なり、お客さまからは見えない「アヒルの水かき」のようなものです。しかし、「国産じゃがいも100%」という価値を届けるために必要ならば、投資をして時間をかけてでも実行しなければならないことです。

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