ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #番外編

ブロガー 徳力基彦が語る、今後のこと。「会社に依存してしまっている人に、勇気を持ってほしい」

前回の記事:
アジャイルメディア・ネットワーク 徳力基彦が語る。取締役を退任する心境と、これまで
 6月末をもってアジャイルメディア・ネットワークの取締役から退任することを発表した徳力基彦氏。自らのブログ「このたびアジャイルメディア・ネットワークの取締役を退任し、アンバサダー/ブロガーとして再雇用してもらうことにしました。」では、退任する背景や経緯、その時々の心情を率直に語り、大きな反響を呼んだ。「現在の心境」について聞いた前編に続き、後編では「今後のビジョン」について語ってもらった(第2回/全2回)。
 

会社だけに所属している状態から、少しだけ“ずれる”


——7月以降、徳力さんは、どのような活動をしていこうと考えていますか。

 現在、アジャイルメディア・ネットワークで、企業に対してアンバサダープログラムを提案する活動をしていますが、そういった取り組みが拡がるためには、その土台としてビジネスパーソン一人ひとりにもっとブログやSNSなどのインターネット上のコミュニティの価値を理解してもらう必要があると思っています。

 昔の自分のように、ブログやSNSの可能性、コミュニティの素晴らしさを知らずに、世界を狭めてしまっている人に向けて、それらがビジネス上の武器になることを知ってもらいたいと思っているんです。

 それが私の価値観を変えてくれた“ブログへの恩返し”だと思っています。
徳力 基彦氏
アジャイルメディア・ネットワーク 取締役CMO/ブロガー
NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。2019年6月末で取締役を退任、7月からは同社 アンバサダー/ブロガーに就任。

——今後は、ビジネスとして、ブログやSNSなどコミュニティの重要性を啓発する活動をしていくのでしょうか。

 はい、それができたらいいなと思っています。先日、10年以上ぶりにビジネスパーソン向けにブログの使い方を教える講座の講師をしたのですが、当時同じような内容を話したときと比べると、かなりの手応えがありました。

 今後は、こういった講演活動も増やしていきたいですね。ただ、妻を満足させるぐらいの収入源になるかは、別問題ですが(笑)。今は、就職活動中です。

——ビジネスパーソンが情報を発信して、個人としてのブランドを高めていくことは、田端信太郎さん(ZOZO コミュニケーションデザイン室 室長)の著書『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』が思い浮かびます。

 そうですね。考え方の根本は、近いと思います。

 ただ、「ブランド人」と言ってしまうと、普通の日本企業の社員からすると、なんとなくインターネット上でパーソナルブランディングをして、次々と転職していくというイメージに捉えられがちかなと思っています。

 田端さんのように、普通の会社員を“煽る”言い方をすると、ブログやSNSを使うこと自体が企業の中で特殊な人のやることに見えちゃう気がするので、自分は違うアプローチをとろうかな、と。

 どちらかと言うと、私自身がそうであったように、普通のビジネスパーソンにブログやSNSをもっと気軽に使ってほしいと思っています。もちろん向き不向きはありますから「やらないよりは、やった方がいいよ」というスタンスです。



——最近は、マルチキャリアやスラッシュキャリアなど、副業に注目が集まり、会社での仕事とは異なる活動に取り組みやすい時代になっています。SNSも効果的に活用できそうです。

 私は、必ずしも副業として収入を得る活動をしなくても、会社というコミュニティのみに所属する状態から、少しだけ“ずれる”だけでもいいと思っています。大企業ですら、終身雇用が崩れつつあります。そんな状況にも関わらず、会社にすべてを委ねてしまうのは、リスクが高いと思うんです。

 会社の仕事や肩書きとは「別の自分」という存在をネット上に置けば、新しい出会いやコミュニケーションが発生します。それは会社に100%人生をコミットしている人からすると、副収入を求めていたり、転職活動をしたりしているように見えるかもしれませんが、実は会社にとっても新しいコミュニケーション手段を身に付けた社員が増えることは、新しいネットワークにつながって、絶対にメリットがあることなんです。

 最近は、私の周囲でも実名でブログやTwitterを始める人が増えて、うれしく思っています。ビジネスパーソンとしての自分をインターネット上に露出することはリスクが大きいと思われがちですが、そのリスクを許容できるのであれば、露出した方がビジネスパーソンとしての強みになると思います。

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