伊東塾 in 北海道 特別対談 #02

物流革命で人が移動しなくなる未来、店舗の存在意義は? 吉野家 サツドラ対談

会社側のエゴではなく、お客様目線で




伊東 テクノロジーの導入も思ったほどは簡単ではありません。たとえば𠮷野家ではスタンプを集めると牛丼がもらえるキャンペーンをやっているんですが、スタンプカードの紙代だけで数千万円かかるんです。それをやめてデジタルスタンプを数百万円で導入したところ、参加率が20分の1に減りました。だから今も紙でしているんですよ。

スマホオーダーも導入しました。テーブルに設置したQRコードをスマホで読み取るとメニュー表が出て、ボタンを押すとオーダーしたものが運ばれるという。でも利用率が1%いかなかったんです。ちなみにテクノロジーに慣れ親しんだお客さまが多い、青山1丁目店でも1%いかなかったんですよ。目の前に立っている店員に注文すればいいのに、わざわざQRを読み込んでというステップを踏まなくてはいけないから、お客さまにとっての便利さがなかったんですよね。

でも、このサービスをつくった本当の理由は、地方のためです。地方はドライブスルー比率が非常に高いので、課題はオーダー渋滞なんです。それを解消するために「パークスルー」を実施しようと思っています。事前注文や駐車場からスマホで注文して、商品ができあがると呼び出しをするので、受け渡しカウンターに来てもらうというものです。

富山 いいですね。

伊東 ドライブスルーに並んだまま暇をつぶすのではなく、好きなように暇を潰してもらう。これは流行ると思うんですが、これから「パークスルー」という言葉を普及しないといけないですね(笑)。

富山 私たちもアプリを開発していますが、リアルなオペレーションと繋げたときに会社側のエゴになりがちですよね。アプリを使う層と、そうでない層があるので、今はレジやペイメントをどちらの層にも対応できるように進めています。

また、私たちは北海道共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」と連携して、「エゾクラブマガジンコミュ」という紙のフリーペーパーをつくっています。そこに地元のさまざまなコミュニティの活動を紹介しているのですが、皆さんこれに載りたいと言ってくれるんです。それが、もしアプリに載るというのであれば、ここまで喜んでもらえないと思います。
 
「エゾクラブマガジンコミュ」2019.8 SUMMER

伊東 メディアの使い分けが上手ですね。吉野家は、ものの考え方、発想、意思決定がキッチンの中からの視点になりがちです。それは、ややもすればお客さまに負担をかけてしまいます。サツドラさんのように、お客さまから見たサービスが必要になると思っています。今日は、ありがとうございました。
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