TOP PLAYER INTERVIEW #20

マーケターとしてのレールから離れて、僕は自由になった。『VISION DRIVEN』著者 佐宗邦威

前回の記事:
「What」ではなく「Why」を大事にできるマーケターに。ベストセラー『VISION DRIVEN』著者 佐宗邦威の提言
 共創型戦略デザインファームBIOTOPEのトップとして、デザイン思考などを用いた商品開発、リブランディング、インナー支援などに取り組んでいる佐宗邦威氏。2019年3月に上梓した書籍『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』は、発売1カ月で8万部を突破するベストセラーとなった。インタビューの後編では、佐宗さんの異色のキャリアについて聞いた。
 

圧倒的に優秀なP&G先輩と出会って考えたこと

 ―― 佐宗さんは、マーケターとして活躍した後、米国デザインスクールに入学するという異色のキャリアを歩んでいます。これまでのキャリアを振り返って、エポックメイキングだったことは、何でしょうか?
佐宗 邦威氏
BIOTOPE代表/チーフイノベーションプロデューサー

東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手掛ける。ソニー クリエイティブセンターにてソニー全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、共創型戦略デザインファームbiotopeを設立。京都造形芸術大学創造学習センター客員教授。

 まず大きかったのは、P&Gの4~5年目ぐらいの時に、森岡毅さん(現・刀 代表取締役社長)や伊東正明さん(現・吉野家 常務取締役)、和佐高志(現・日本コカ・コーラ 副社長)さん、音部大輔さん(現クー・マーケティング・カンパニー 代表・元資生堂ジャパン CMO)などの偉大な先輩たちに出会ったことです。

 この優秀なマーケターを前にして、「自分は何に貢献できるんだろう」という思いをすごく持ちました。僕が入った時のP&Gは、ジム・ステンゲルさんがグローバルCMOである種、マーケティングがシステム化されていて、会社の敷いたレールに乗っていれば、自然と成果が出るという環境でもありました。

 そうした中で数字を高めることはできたけれど、当時の自分は彼らと比べると圧倒的にブランドのターンアラウンドができたり、新規のブランドを立ち上げたりできるタイプではないな、ということもよく分かっていました。

 ちょうどその頃、ダニエル・ピンクの『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』という本に出会ったんです。それはいわゆる21世紀型の感性を生かした仕事の仕方について書かれた本で、その中に「デザイン、 Story、プレイ(遊び)、意義、共感、統合(ハーモニー)」という6つのキーワードが出ていました。

 これはP&Gでは、決して学ばないスキルで、「違いをつくれるマーケターが無意識的にやっていることは、これだ」と思うようになって、それから感性的な分野の勉強をするようにしたんです。

 その後、ブランドマネージャーに昇進したものの、数字を10%伸ばす、15%伸ばすっていうゲームを楽しめなくなってしまい、その結果、モチベーションを完全に見失ってしまって、鬱になってしまいました。

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