ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #08

普通、そこまで監督がやる? 『カメラを止めるな!』 上田慎一郎が伝授するTwitterプロモーション

『カメ止め』の熱狂を生んだ、コミュニティづくりの原則

徳力 例えば、舞台挨拶で撮影をOKにしたり、ハッシュタグを「#カメラを止めるな!」ではなく「#カメ止め」にしたり、Twitterに投稿してもらう工夫をされています。上田監督の中で、こうした手法が確立されたのはいつごろですか。

上田 これまでの経験の中で、徐々に確立していきました。実は数ヶ月前、映画の勉強のために、新興宗教のつくり方の本を読んだんです。そこに書いてあったことが『カメ止め』で僕たちがしていたことと似ていたので驚きました。定期的にイベントを行いなさい、同じユニフォームを着なさい、同じポーズをつくりなさい、と。



徳力 すごいですね。以前、インタビューした起業家のけんすうさんも宗教の構造がコミュニティをつくるときに参考になる、とお話しされていました。上田監督は、いつから新興宗教に似たスキームになったと思いますか。

 参考:けんすうが語る「広告論」 企業は、宗教のコミュニティづくりから学ぶべき

上田 
例えば、同じユニフォームを着るというのは、舞台挨拶を2週間毎日行う予定だったため、着る服を毎日考えるのは大変だなと思って、Tシャツで揃えようと決めたんです。同じポーズも、写真を撮るときにはこうしようと、いつの間にか決まっていましたね。パンフレットにサインするというのも自然な流れでした。

徳力 どれも狙って始めたわけではないのですね。

上田 そうですね。結果的に舞台挨拶の写真、パンフレットへのサインの写真、一緒に記念撮影した写真と一人が何回も投稿してくださるようなことが起きました。

徳力 僕も映画のプロモーションのお手伝いをしたことがあるのですが、映画はクチコミしてもらうのが、実はすごく難しいんですよね。映画を観た人がTwitterに何か写真を投稿しようと思っても、映画の素材は権利関係で使えませんし、宣材写真もすべて同じなので独自性が出しづらいし。

そう言えば、公開前日にはニコ生で全編公開しましたよね。公開前の映画をネットで全編流すなんて、すさまじい話です。



上田 メジャー映画では絶対にできないですよね。試写イベントをもっと多く開催したかったので、全国一斉試写のつもりでした(笑)。

『カメ止め』は11月のイベント上映から、6月の本番上映までに試写会をしたり、DVDでサンプルを見せたり、雑誌の取材を受けたりと、映画業界内では話題が沸騰していました。でも上映している場所がなかったので、観たいという思いが溜まっていたんです。その状況で本番上映が行われたことも、ヒットの大事な要素だったと思います。

徳力 お話を伺って『カメラを止めるな!』が実を結んだのは、上田監督が地道に丁寧にコミュニケーションの戦略を立てていたからだと改めて実感しました。今日は、ありがとうございました。

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