ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #09

SNSでモノが買われる時代、アップデートされるマーケティング・モデル

SNSでモノを買われる時代のマーケティングモデル


徳力 今回の書籍のタイトル『僕らはSNSでモノを買う』は、とても秀逸だと思いました。飯髙さんは、SNSの口コミにモノを買わせる効果があるという結論に早いタイミングで至っていたのでしょうか。

飯髙 そうですね。自分の中でそれが答えとして出たのは、ハイベロシティにいた7年前だったと思います。あまりインターネットを触っていなかった私でさえ、SNSの口コミでモノを買うのであれば、より多くの人もそうだろう、と。



徳力 
Facebookマーケティングの支援をしながら、SNSは単純にファンを増やすだけでなく、その口コミ、つまり「UGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)」が売上に貢献すると考えていたというわけですね。

飯髙 
はい。実はUGCは最近注目されるようになった言葉ですが、2000年代からすでに存在していたんです。掲示板に書かれているコメントやグルメサイトのレビューもUGCですよね。当時から、みんな「食べログ」のコメントを見て、お店を予約していました。そう考えると、僕らはずっとUGCでモノを買っていたんですよ。

さらに、その後に登場したFacebookやTwitterは、掲示板やグルメサイトよりもユーザー同士のつながりが密接なので、情報の信頼性がより高く感じられます。それならば、SNSでモノを買わない理由はない、と思っていました。

私はその消費行動の変化を「ULSSAS(ウルサス)」というモデルで解説しています。UGCを起点に検索行動をして、アクションを起こすモデルです。
 
■ULSSAS(ウルサス)
UGC(ユーザーが作ったコンテンツ=口コミ)→LIKE(いいね)→Search1(SNSで検索)→Search2(ヤフー、グーグルなどで検索)→Action(行動・購買)→Spread(拡散)

徳力 前回の「カメラを止めるな!」の上田監督のインタビューでも、SNSの口コミから映画を観に行った人の割合が高いという話がありました。ネット上の口コミでモノが売れるという論は、納得できるものだと思います。

ただし、マス広告に慣れている世代のマーケティング担当者は、ある程度広告を当てることで会員登録させたり、クリックさせてサイトに誘引できたり、人を動かせると思っているケースが多いですよね。

実はデジタルの世界も同様で、大量の広告を当てて、そのクリック率が低くても数%がコンバージョンすればいい、あるいはインフルエンサーの起用もフォロワーが大勢いる方が確率的に多くの人が動くはずだ、と思っている人が非常に多いと感じています。

ところが実際のところ、先ほど飯髙さんが話したように、私たちは数十人しかいない友だちから言われた口コミから消費しています。大企業の担当者は、そのギャップに板挟みになりがちですが、どうすれば乗り越えられると思いますか。

飯髙 そこは私も本当に難しいと思っています。正直なところ、私たちがSNSでこうすると成果が出ますと説明しても、担当者が使う予定の金額とSNSの施策の規模が合わないということもあります。与えられた予算を使い切ることがマーケターの仕事の評価にも関わってくるとなると、やりづらい面があります。

また、キャンペーンでフォロワーを増やしてきたアカウントは、僕らが入ってアカウント分析を行うと、懸賞用のアカウントが半分以上占めていることもあります。人間の身体に例えると、癌のステージⅣ。

徳力 死にはしなくても、メタボ状態とは言えそうですね(笑)。

飯髙 はい、厳しい状態です。大きく方針転換する必要があるのだけれど、彼らはそれで評価を得てしまっているので、もう抜け出せない状況になっています。

徳力 そうですね。例えば、フォロワーの7割がキャンペーン用アカウントなので、残りの3割をしっかり見ていきましょうと提案しても、その7割がもったいないという発想になりがちです。

飯高 その通りです。インプレッション数を見てしっかり届いていると言いますが、懸賞目的のアカウントは動いていないに等しいんです。その本質を知らずに風呂敷ばかりを広げているけれど、実は中身がないという状態を理解してもらうには、まだまだ難しいなと思っています。

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