ミレニアル世代の旗手たち 徳力基彦インタビュー企画 #10

無作為に当てた広告で獲得した「いいね!」への違和感。大企業のSNS活用の課題と解決法

前回の記事:
SNSでモノが買われる時代、アップデートされるマーケティング・モデル
 2019年8月に発売した著書『僕らはSNSでモノを買う』が4刷となり、ヒット中のホットリンク 執行役員CMOの飯髙悠太氏へのインタビュー後編。SNSを活用したマーケティングの課題から解決方法まで詳しく話を聞きました。
 

営業として売上を上げる中で、常にあった違和感


徳力 飯髙さんは、20代の頃にFacebookマーケティングの事業で成功して手応えを感じて、そこから口コミで商品が買われていくようになった過程を実体験していますよね。その経験が現在の飯髙さんに大きな影響を与えていそうです。

飯髙 
そうですね。ただ当時は、大企業から多くの広告費をいただいて「いいね!」を集めて、自分の営業成績は上がるんだけれど、「これで本当に正しいのかなあ」という疑問をもちながら働いていました。

例えば、フォロワーを集めるために、広告を無作為に当てて「いいね!」してくれた人が本当の企業や商品のファンと言えるのだろうか。または、本当に消費者が動くのは、ユーザーが自発的に投稿した情報なんじゃないかと考え始めて…。
飯髙悠太 氏
ホットリンク 執行役員CMO
広告代理店やスタートアップ企業で複数のWebサービス・メディアの立ち上げ、50社以上のコンサルティングを経験。2014年4月、「ferret」の立ち上げに伴いベーシックに入社後、「ferret」創刊編集長、執行役員を務め、2018年12月末に退職。2019年1月より現職となる。2019年よりホットリンクで執行役員CMO(マーケティング責任者)を務め、支援企業のマーケティング・SNSコンサルティングを実施。

徳力 当時、なぜ違和感を感じることができたんでしょうか。例えば、ExcelでFacebook広告のCPA(Cost Per Action・顧客獲得単価)を追っていると、いつの間にかユーザーの感情を忘れてしまって、数字の改善が全てになってしまいがちですよね。

飯髙 うーん、なぜでしょうか…。ただ、CPAは売上に関わってくるので、その数字を追うことは、まだ理解できるんですが、CPF(Cost Per Follow・フォロー獲得単価)も同じように考えてしまうのが不思議だったんですよね。ファンになったからといって、そのままモノを買って売上に貢献するわけではないですし。

徳力 広告会社の立場でありながら、その感覚を持てたことがすごいですよね。クライアントから広告費をもらって仕事をしていると、どうしても「目の前の数字を上げてなんぼ」という意識になりがちじゃないですか。その罠にはまらなかったのは、なぜですか。
徳力基彦 氏
アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガー ピースオブケイク noteプロデューサー
NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、 2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視する アプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社 長に就任し、2014年3月より現職。2019年6月末で取締役を退任、7月から現職。同月、ピースオブケイク noteプロデ ューサー/ブロガーにも就任。


飯髙 
それはハイベロシティにいた当時、私が自社プロダクトやオウンドメディアのマーケティングを担当するなかで、SNSの貢献度は短期的なコンバージョンだけではない、と分かっていたからかもしれません。

徳力 自社のマーケティングをしているから、KPI(key performance indicator)とKGI(Key Goal Indicator)のギャップみたいなものに気づいたんですね。

飯髙 
ただ、そうした思いをクライアントに伝えても、なかなか分かってもらえなかったんです。そもそもファンという言葉も人によって定義が違いますし。

徳力 たしかにFacebookページ上のファンと、そもそもの企業やブランドのファンを同じと捉えてしまう人もいますよね。単に「いいね!」ボタンを押しただけなのに、これでファンが増えた、と。ある意味、うまく騙せばビジネスにしやすい時代だったと思います。

その後に飯髙さんは、ベーシックに移ってWebマーケティングのメディア「ferret」の編集長に就任されますが、それはなぜですか。

飯髙 「ferret」はもともとSEOなどのサービスだったのですが、ベーシックの代表である秋山勝さんに会ったときに、それをピボットしたいという想いを伝えられて、僕も実体験として本質的なことを広告会社が提供しきれていないという違和感を持っていたので、メディアであれば世の中の多くの人が騙されずに、マーケティングの知識を一般化できるのではないかと考えました。

僕は当時の年齢で、他の人よりも幅広い経験をさせてもらって、SNSの運営もメディアの育て方も理解していたので、ベーシックに移るのは、面白いと思ったんです。

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