日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #01

ソーシャルグッドからブランドパーパスへ。P&G パンテーンは、なぜ社会問題を題材としたのか?

パンテーンの「令和の就活ヘアをもっと自由に」


 今回取り上げるのは、パンテーン(P&G社)の「#令和の就活ヘアをもっと自由に」という広告コミュニケーションです。新聞広告では、「令和元年10月1日、内定式に自分らしい髪で来てください」とメッセージし、テレビCMや自社Webサイトでも、同じメッセージを強く訴えました。また、139社の賛同企業の名前も掲げられています。

 また時間を遡れば、パンテーンは、昨年も同趣旨の広告を発信していました。駅貼りなどで「自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?」という強烈なメッセージを、1000人の就活生のホンネをちりばめたビジュアルで表現しました。
 
特設サイトでは、賛同企業のロゴも紹介している

 そして、こうしたメッセージは、パンテーンのブランドフィロソフィーである「美しい髪によって、女性が一歩前に踏み出す勇気を与える」に沿って開発されていると言います。
 

 この広告に対する反応をWeb上で探すと、「賛否両論」という書き方が多く見られます。“就活を窮屈に感じていたので賛成だ”という人もいれば、“就活が上手くいってないのにそんなこと言ってられない”とネガティブな反応を示す人もいるのです。

 こういった賛否のある事象に意見を述べることは、今まで日本ではあまり見られませんでした。担当者は「炎上」を嫌うし、意見を述べることのメリットが認識されて来なかったからだろうと思われます。

 この広告コミュニケーションを手掛けたP&G社大倉佳晃氏は、ネプラス・ユーというマーケティングカンファレンスのキーノートに登壇し、大倉氏担当以前のパンテーンの売上が低迷し、社内で担当ブランドとしては“墓場”だとまで言われていた、と明かしました。そうした“低迷からのV字回復”を目指したからこそ、日本では珍しい、こうした思い切った施策を行うことができたのかもしれません。

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