デジタル時代のブランドコミュニケーション研究会 #04Sponsored

資生堂、ライオン 統合マーケティング実現に向けた組織構築【研究会レポート】

前回の記事:
キリン一番搾り 好調を支えるIMC設計。4つの瞬間に「マス×デジタル×リアル」で訴求 【研究会レポート】
 第3回目となる「デジタル時代のブランドコミュニケーション研究会」のテーマは、「統合マーケティングの実現へ向けた組織構築」。資生堂ジャパン メディア統括部 エグゼクティブマネージャーの小出誠氏と、ライオンCXプランニング室長兼デジタルコミュニケーション開発室長の大村和顕氏が取り組みを紹介し、企業のマーケティング組織に何が求められているのかを探った。


 

負のスパイラルから脱却し、成長軌道に乗る

 
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 常務理事
資生堂ジャパン メディア統括部長エグゼクティブマネージャー 小出誠氏

 国内化粧品市場で、トップシェアを誇る資生堂。ここ数年売上高、利益額が伸び続けるなど、好調を維持している。しかし、2008~2013年は、自社の強みを発揮できない悪循環に陥っていた。

 「ヒット商品が生まれないこともあって、流通リベートが増加。マーケティング費や広告費を削減していたこともあって、売れない、在庫が増える、ブランド認知も伸びないという負のスパイラルが続いていました」(小出氏)。

 それを逆転させる取り組みが2014年、魚谷雅彦氏の社長就任からスタート。同年に小出氏はコミュニケーション統括部長に就任して、マーケティングコミュニケーション改革の陣頭指揮をとることになる。

 「大きく変わったのは、広告費です。1990年代に比べて大幅に減っていた広告投資を増やし、ブランドが認知され、店頭で商品が売れるから仕入れが進むという順回転に戻り、2016~2017年から営業利益が増え始めました。また、2014~2015年からインバウンド消費が社会現象になり、高級化粧品の在庫が足りなくなるほど売れています。またベトナム工場での製造に切り替えていたブランドを中国など海外の方が『made in japanじゃない』と気にされるため、生産拠点を日本に戻し始めました。来年、再来年にかけて大阪や福岡などに工場を建設しています。また、生産量を確保するために、ホテルやゴルフ場に卸していた業務用事業を無くすなど、選択と集中を図っています。2016年頃からは、空港免税店での化粧品ビジネス領域も成長しています」
 

企業ブランドから「商品ブランド」推しへ


 この5年の間に、資生堂はブランド戦略の転換も果たした。従来は、資生堂という企業ブランドを前面に押し出したコミュニケーションをしていたが、思い切って変更したのだ。

 「商品ブランドを通じて、消費者との関係づくりを強化するようにしました。これまでは『資生堂TSUBAKI、資生堂UNO』のように企業名とセットでコミュニケーションしていましたが、2015年からは広告に資生堂を大きく打ち出さないようにしています」

 ブランド戦略の転換とともに、ブランドマネージャー制を本格導入。PL(損益計算書)管理を徹底し、2016年からブランドと一体となるコミュニケーション支援体制を強化。機能別からブランド別の体制に再編成して、ブランドのIMC(統合マーケティング)を推進するようにした。

 「人的リソースを強化するため、ブランドマネージャーの約半数は外部から採用。また、新卒者において、マーケティング職としての採用後に他部門へ異動することを止めて、専門分野の人材育成を進めています」

 最後に、小出氏は「組織づくりには制度といったハード面だけでなく、心理などのソフト面も鍵を握っている」という考えを紹介。「直近5年間で昇格や降格、新規採用が頻繁に行われるような組織に大きく変化しました。担当者が一人変わるだけで、チーム全体の空気が変わることがあります。そうした微細な変化をできるだけ早く察知して、調整することも組織づくりには重要です」と話し、講演を締めた。

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