社会課題×クリエイティブ×PRのススメ #02
Oisix広告「かあちゃん、楽しい夏休みをありがとう。」は、なぜ売上増加につなげられたのか
大反響を呼んだ「クレヨンしんちゃん」コラボ広告
こんにちは、井上政人です。オイシックス・ラ・大地でマーケティング領域を担当しています。
前回は、「社会課題×クリエイティブ×PRのススメ」がなぜ重要なのか、その背景をお話しました。今回は、2019年夏休みにSNSを中心に話題になったOisix(オイシックス)とクレヨンしんちゃんのコラボレーション広告「かあちゃん、楽しい夏休みをありがとう。」をご紹介します。
この広告は、小学生の夏休みが終わるタイミングに合わせて、クレヨンしんちゃんの野原家が住む街・埼玉県春日部駅のみに8月26日~9月1日に掲出しました。
広告に掲載された「しんのすけ」のつぶやきに共感が生まれ、約1週間で、Twitterで20万リツイート以上という大きな反響をいただきました。
その結果、Twitterのトレンド入り、Webメディアで紹介された記事がヤフトピに掲載。そして、テレビ取材にもつながるなど、多くの方にOisixを知っていただける機会になりました。
そうした中で、「うるっときてしまった」「あの言葉はきっと当事者にしか響かないんだろうけど、しんちゃんの言葉がすごく嬉しかった」「(泣いてしまうから)電車の中で見るのは危ない…」など、たくさんの共感の声をいただきました。
では、今回の広告は、どのような意図で企画したのでしょうか。
それは、次のような気づきから始まりました。
夏休み期間は、子どもたちが家にいる時間が増えて給食がないために、お母さんは毎日3食の食事を用意する必要があり、家事の負担が増える、という事実です。
当社調べのアンケートによると、「子どもが夏休みの時期は、普段の生活より『大変』『疲れる』『憂鬱』と感じますか?」という問いに対して、75.2%が「はい」と回答しています。
食材宅配やミールキットなど、家事の時短につなげるサービスを展開しているOisixだからこそ、そんなお母さんを応援したいと考えました。それと同時に、この広告には、次のようなボディコピーを掲載して、家事・育児が母親の役割として捉えられている現状へのOisixからの挑戦という意思も込めています。
「子どもにとっては、楽しい楽しい夏休み。けれども、お母さんにとっては…ちょっと大変な夏休みでもあります」
「家族で旅行に出かけたり、子どもと過ごす時間が増えたりする。それは、とても喜ばしいことだけど、夏休みの家事や育児の大変さは、令和になってもなかなか変わりません」
Oisixは、ご利用いただいている23万人のお客さまに対して、共通の商品やサービスを提供しているではなく、お客さま一人ひとりの課題を解決するために23万通りの商品やサービスを提供しているという考え方をしています。そういう点で「夏休みのお母さんは、大変」という課題は、私たちが解決するべき社会課題のひとつだと捉えて、この広告を企画したのです。
個人的には、社会課題に対してブランドがどのような姿勢で取り組むべきかを「ブランドの存在理由=ブランドパーパス」だと定義しています。では、そのブランドパーパスを発信すれば、事業成長につながるのでしょうか。
いえ、それだけでは、難しいと感じています。