トップマーケターが語る2020年の展望 #04
トップマーケターが語る2020年の展望【西井敏恭、藤原義昭、本田哲也、山口有希子】④
東京オリンピック・パラリンピックが開催され、大きな盛り上がりが予想される2020年。トップマーケター16人が「2020年の展望」を語ります。第4回は、シンクロ 西井敏恭氏、コメ兵 藤原義昭氏、PRストラテジスト 本田哲也氏、パナソニック 山口有希子氏による展望です(全4回 ※50音順)。
持つべき心構えとして、「守破離」を挙げたい
西井敏恭
シンクロ 代表取締役社長
シンクロ 代表取締役社長
2019年はサブスクリプションやDtoCが本格的に注目され、従来から言われてきたことだが、いよいよ商品の差別化や広告に頼ったマーケティングから、顧客との関係性によってしか選ばれない時代になったことを実感する一年でした。
2020年も当然この流れは変わりませんが、よりIoTやSNS、そしてSDGsといったことに力を入れる企業が顧客から支持されると思います。顧客中心である組織づくりと社員全体のマーケティングの教育は必須になるでしょう。サブスクリプションやDtoCの成功企業を見ても、従来の成功体験から変われない経営者では難しく、一気に若くてマーケティングの理解がある経営者が誕生する一年になることを期待します。
2020年も小売業のデジタル化が進む
藤原義昭
コメ兵 執行役員
コメ兵 執行役員
小売業では2019年は特にデジタル化が進んだ年であった。2020年もさらに進むだろう。特に顧客の動きに合わせてデジタルとリアルをつないで自然な顧客体験を提供し、より便利により楽しくを追求していく。個人情報保護について顧客のデータの取り扱いについてはより厳しくなることになりそうだ。施策などの推進と同時にマーケティングでは高い倫理観を持って推進したいと思う。
新しいパーセプションで、新世代の顧客を獲得できるか
本田哲也
PRストラテジスト / 本田事務所 代表
PRストラテジスト / 本田事務所 代表
「認知(アウェアネス)」よりも「認識(パーセプション)」を考えることが、よりマーケティングにおける重要課題になるだろう。平成を通じて存続した多くのブランドの認知度はすでに十分に高い。課題はもはや「知ってもらう」ではなく、「新しいパーセプションで、新世代の顧客を獲得できるか」だ。一方、新しい領域を開拓するスタートアップブランドも、「認知」だけに走ってはならない。カテゴリーそのものに好ましいパーセプションを獲得することが、すなわち新市場の確立につながるからだ。PR発想によるパーセプションチェンジの成功例に期待したい。
デジタルエクスペリエンスが重要な時代に問われるマーケターと企業の倫理
山口 有希子
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 エンタープライズマーケティング本部 本部長
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 エンタープライズマーケティング本部 本部長
カスタマーエクスペリエンスの向上が企業にとっての重要なイニシアチブになっている時代、デジタルでのコミュニケーション領域はより広くなっている。同時に、デジタルにおける様々な問題が大きな社会課題になっている。2019年11月に日本アドバタイザーズ協会が提唱した「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」 は、もうこれ以上無視できない状態になっていることへの広告主からの警鐘でもある。業界全体で対応しなければ解決できないアドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフティ といった問題への取り組みを加速させる必要がある。また、宣言の中でも言及しているが、2020年は個人情報の取り扱いや広告の出し方など、ユーザーが不快と思う企業コミュニケーション活動に対しての風当たりがより厳しくなっていくだろう。ヨーロッパで施行されたGDPR、そしてそれよりも厳しいといわれるCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が今年から施行されることを考えても、個人情報についての意識が変わる潮目の年になるのではないかと考えている。今、マーケターや企業にとって重要となるのは、「どういう意識でユーザーと向き合うか」という基本的な姿勢や、その「倫理観」ではないだろうか。