日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #02

「君の名は。」からカンヌまで。強力コンテンツに “乗っかる” レバレッジ型クリエイティブのススメ

前回の記事:
ソーシャルグッドからブランドパーパスへ。P&G パンテーンは、なぜ社会問題を題材としたのか?

日清食品とサントリーのロゴの「入れ替わり」が話題に


 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介し、その分析に努めているのですが、この連載はある意味では逆にまず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで「その意図や施策の在り方が海外のどんな潮流と関連しているのか」について考えていこうと思います。

 実際、日本で話題になった事例の中には、海外のトレンドの延長線上にあるものが少なからず存在しています。今回は、その連載の第2回です。

 今回取り上げるのは、2019年6月30日の映画『君の名は。』地上波放送時の広告コミュニケーション事例です。
 
映画『君の名は。』公式サイト

 映画『君の名は。』の2人の主人公は、東京都心に暮らす男子高生・瀧(たき)くんと岐阜県飛騨地方の山奥の町に暮らす女子高生・三葉(みつは)ちゃん。この2人の主人公の意識が「入れ替わる」、つまり瀧くんの身体に三葉ちゃんの意識が宿り、三葉ちゃんの身体に瀧くんの意識が宿るということをテーマに大ヒット。2人は週に何度かの「入れ替わり」を経験するうちに、お互いの存在を意識し始める、といったストーリーです。

 この人気映画の地上波放送の提供をする場合、普通に他の時間帯にも流しているテレビCMを流すのが、果たして得と言えるでしょうか?この人気映画のコンテンツパワーをなんとか活用しようと考えるべきではないでしょうか?

 今回は、この人気コンテンツに上手に“乗っかって”、いわばレバレッジを効かせて、大きな効果を得ようというチャレンジがなされました。

 放送内で各社がコラボCMを開始すると、ロッテとソフトバンク、サントリーと日清食品、日清食品とソフトバンク、ミサワホームとバイトルのロゴが入れ替わる演出が行われ、ヒロインの三葉の声で「ここからはソフトバンク、ロッテ、あれ? サントリー、日清食品の提供で入れ替わってる~!?」というセリフが流れたのです。そのバックには、本編の『君の名は。』の映像が効果的に使われていました。

 僕自身は、その日の深夜に録画でこの放送を見ました。普段であれば、“広告コミュニケーションの研究者”である自分でさえテレビCMを飛ばして視聴しがちなのに、この時ばかりは驚愕し、この部分を何度も繰り返して再生しました。

 長く広告会社に勤めていた立場からすると、「ロゴの入れ替わり」は基本的にあり得ず、企画したとしてもその調整の困難さは想像も出来ないほどだと感じられたからです。

 SNSなどでも、「目が醒めたよ!面白かった!」「こっちに感動して泣いてる」「ただただ凄かったです」「やられた!」などの好意的なコメントが多数寄せられたと言います。

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