よなよな流「ファンベース・ブランディング」―ファンの熱狂をブランドの力に変える方法 #02

「よなよなエール」は、ブランドイメージを管理ではなく共創する【稲垣聡】

前回の記事:
熱狂的ファンを味方に!よなよなエールも実践する「ファンベース」

三社祭に垣間みる、熱狂ブランドの特徴

 浅草といえば何を思い浮かべるでしょうか?

 5月の浅草といえば、三社祭の季節。3日間の人出は200万人以上にもなります。浅草に集う神輿の担ぎ手はまさしく熱狂的です。浅草という地域ブランドと考えれば、祭りの熱狂的な人々の存在はブランドイメージに不可欠なものだということがわかります。

 そんな楽しい三社祭も、東京都区部の山の手(西側)出身の私は、なにやらよそ者と感じてしまい、地元の知人に誘われても神輿を担ぐ輪に入るのは気が引けます。意外にも、最近の神輿の担ぎ手は、地元以外の同好会の人がかなり多いそうですが。

 ここに私は、熱狂的なファンがいるブランドとの類似点を感じるのです。

 浅草三社祭の熱狂、グループでお揃いのジャケットを着てツーリングするハーレーダビッドソンのライダーたち、ホグワーツのローブをまとったUSJのハリー・ポッターのリピーターたち…。

 熱狂的なファンの存在はブランドイメージの主要な一部を形成しており、ファン自身のアイデンティティの一部となります。“熱狂的ファン”とまでいかない顧客や世の中から見れば、ブランドイメージの重要な一部をなし、購買意思決定に影響を与えるに違いありません。

 熱狂的ファンのLTV(顧客生涯価値)や推奨行動を活用する「ファンベース・マーケティング」が現在注目されていることは前回触れたとおりです。

屋外イベント「よなよなエールの超宴」の開催は、よなよなエールのブランドイメージ形成に多大な影響を与えている要素のひとつ。
一方、ファンの存在は、ブランドイメージ形成、つまりブランディングにどのような影響を与えるのでしょうか。
 

ブランドイメージ形成において重要な「使用者プロフィール」

 ブランディングとは、「ブランドの価値を高めるために消費者の心に働きかける一連の活動」と定義することができます。

 ブランド論の著名な研究者であるケビン・レーン・ケラーは、“ブランドは顧客のものである”という考え方のもと、企業が取り組むべきブランディングの一連のステップを示した「ブランド・レゾナンス・ピラミッド」を提案しています。

 このフレームによれば、「どんな人がそのブランドを使っているイメージか(使用者プロフィール)」は、ブランドイメージの重要な源泉のひとつであり、消費者にとってブランドの好ましさやユニークさの源泉になるとしています。

 では、これらのユーザーのイメージは、どのように顧客の心の中に記憶されていくのでしょうか。

 従来的には、広告やパブリシティによるものが多かったと思います。あるいは直営の店舗を持つ企業であれば、立地などで来店顧客のコントロールをある程度行うことができるでしょう。例えば「無印良品」は長期にわたる一貫した商品戦略と店舗戦略で、特徴的な顧客イメージをつくることに成功しています。

 いずれにせよ、これまでは、企業が顧客のイメージをコントロールしてつくり上げる方法が一般的でした。

 では、熱狂的ファンが存在する場合はどうでしょうか。

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