日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #03
ポカリスエットが「ダンス選手権」で成功。ターゲットの好きなものに寄り添うことから始めよう
海外事例にも見られる“ターゲットの好きに寄り添う”型
カンヌライオンズ2019の受賞作の中にも、この“ターゲットの好きに寄り添う”を極めた話題作がありました。
それは、ハンバーガーチェーンWendy’sによる「Keep Fortnite Fresh(フォートナイトを新鮮に保て!)」です。ソーシャル&インフルエンサー部門グランプリを始め、多くの賞を受賞しました。
フォートナイトは、バトル(闘う)系のオンラインゲームで、登録メンバー数が3億人を越えているとも言われる世界的大ヒット・ゲーム。一方、Wendy’sは、「冷凍肉は一切使わない」がモットー。
そこでWendy’sは、圧倒的人気ゲーム“内”である行動に出ます。自社のキャラクターと同じ“赤毛でおさげ”のアバターを使って、ゲーム内のハンバーガー店にある“冷凍庫”を片っ端から752台壊し、ゲーマーたちの間で大きな人気を得て話題となったのです。
Wendy’sがメッセージしたかったことは、「ハンバーガーには冷凍肉を使うべきではない、我われは使っていない」ということ。そのメッセージをいわゆるメディアではなく、既存の大人気ゲーム内での行動で伝えたのです。
今の若者たちがこのゲームを大好きなのであれば、そのゲーム内でそのゲーム内容に沿う形で、マーケティング・メッセージを伝えようとしたと考えられます。
カンヌライオンズ2019でセミナーに登壇した米国Wendy’sのクルト・ケイン社長は「オンラインゲームの次は、音楽や、はたまたレスリングといったものにも入り込みたい。Wendy’sは消費者の友だちだから、友だちが話している話題には入り込んで行く」といった趣旨の発言をしていたと言います。友だち(消費者)が好きなものに徹底的に寄り添おうとする姿勢が見て取れますね。
Keep Fortnite Freshの事例ビデオは、こちらでご覧いただけます。
すべての表現を自分たちでつくり上げて、マスメディアの力を借りて、番組と番組の間で流すことや記事と記事の間に掲載すること。従来の広告の考え方はそうしたものでした。
しかし、少し視点を変えれば、“ターゲットは友だち”なのだから、友だちの好きなものを舞台にした方が話を聞いてもらえる。そう考えてみるのもまた、有効なやり方かもしれません。
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