マーケティングは、街にどう貢献できるのか #02
民間と役所、個人、それぞれの「ちがい」を力に変えられるか【渋谷未来デザイン 長田新子】
2018/06/25
渋谷という街のブランド価値の向上につなげる
デザイン会社ですか?2018年4月から民間企業しか知らなかった自分が、街の仕事をすることになった。挨拶して名刺を出したら、「デザイン関係のお仕事ですか?」もしくは「社団法人って何ですか?」という問いかけが多い。
おそらく渋谷区役所内でも、「一般社団法人渋谷未来デザイン(略:FDS)」は、何をする組織なのだろうと思っている人も多いと思う。
簡単に説明すると、我々FDSは渋谷区の外郭団体である。「外郭団体」という言葉を、私もこの組織に入って初めて使ったが、とても便利な言葉だと思っている。なぜなら、そう伝えると「あ、そうなんですね」と質問が返ってこなくなる。どうやら行政関係の仕事をしていると理解してもらえるようだ。
さてFDSは、多様な主体(企業、行政、学校、個人)と共に、渋谷の未来を生み出すプロジェクトを構想し、推進していくために生まれた組織である。もっと突っ込んで話すと、これからの街づくりのために、渋谷区と賛同企業のサポートを受けて立ち上がり、行政だけではできない様々なアイデアやプロジェクトを産官学民と連携して実現していくためのチームである。
ただし、このアイデアやプロジェクトは社会的な課題や公共的な視点に基づいた、人の役に立つことが前提となる。組織の設立は3年間くらいかけて計画されて立ち上がったため、私自身もプレッシャーを受けている。とにかく計画で終わらせず、実現させていくことが大事だと思っている。
設立時の事業計画に入っていたプロジェクトはあるが、動きながらどんどんアイデアを膨らましてつくれるプロジェクトもある。さらに、渋谷区だけに留まらないといったミッションもあるため、企業や行政はじめ様々な人と国境なく仕事ができる可能性が、魅力的で面白いと思っている。
私は、アイデアを生み出すことも好きだが、出てきたアイデアをさらに色付けしてインパクトのあるものとして実現することも、得意だと思っている。ここはマーケティングの力をどう発揮するかとも繋がる。そこで、まずは行政の仕組みや関係する人、新しい技術、事業モデルなどを学びつつ、とにかくスピード感を持って様々なことに挑戦していきたいと思っている。
実は、この組織は3年後に自走するモデルをつくることも視野に入れているため、すでに何かをマーケティングすることのみならず、事業モデルの開拓が必要である。まさしく経営者としての視点が大事になっている。
と、良いことばかり言っていても、仕方がない。
自分は情熱を持ってこの組織のメンバーになったわけだが、日々、これまでの環境とあまりにも異なるため戸惑いもある。どんな組織もギャップがあるので、それは当たり前だと言われればそれまでだが、様々な壁のような存在が日々立ちはだかっていると実感する。
小さな壁なら飛び越えればいいが、やはりハシゴをかけて登ったり、かなりの助走や勢いが必要だったりすることも少なくない。スーパーマリオにならないといけないと思う。