マーケティングは、街にどう貢献できるのか #02
民間と役所、個人、それぞれの「ちがい」を力に変えられるか【渋谷未来デザイン 長田新子】
2018/06/25
FDSの新しい組織のあり方を提案していきたい
一方で、私が現在所属しているFDSも、バックグラウンドは幅広く、まさしく産官学民の組織で成り立っている。代表が東京大学教授で、スタッフには渋谷区からの出向者、特定の分野の専門家、起業家、私のような民間出身者、実際の渋谷区住民(自分も入るが)までが含まれる。しかしながら、考え方から仕事の進め方まで全ての基準が異なり、何かを決めるにもまとまるのが難しい。さらに、「らしい」を表現できる組織かと言えば、それもまだ難しいと思っている。そもそもFDSに組織のキャラクターやカルチャーフィットといった概念が必要かもよくわからないが、現在のところ渋谷らしい多様性、ダイバーシティによるカオスな状況を強みと考えるべきだろう。
今後、仕事の実績を出して「FDSっぽい」という表現をされるくらいの組織になることができたら、メンバーも誇りに思い、賛同者や一緒に働くメンバーも増えて、新しいことにさらにチャレンジできる体制になるのは間違いない。そして、賛同してくれる主体も増えると思っている。「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を標榜している通り、「ちがいをちからに変える集団」になれるのかが大切だ。
まだ生まれてばかりで、正直よちよち歩きで進んでいる組織かもしれないが、人間の成長速度よりも早く成長し、走り出す必要がある。
今は「ちがい」が「ちからになる」の前の「ちがい=ギャップ」の段階だが、それが本当に「ちから=エナジー」になれるように、日々全てのメンバーが120%以上の力で努力すべきだと思っている。そして行政、学校、企業、個人にそれぞれの方法論がある中、どれだけ変化に対応できる柔軟性をもって、主体的に取り組めるかが勝負である。仕事の範囲を決めず、チャレンジできるようでなければ、未来やデザインなんて全く語れない。
我々の組織のプロジェクトのひとつに「社会実証実験」がある。これは5Gといったテクノロジーから街のあり方を渋谷というフィールドで実験して、その結果から新しいことを生み出すことを目的としているが、この組織自体も「社会実証実験」であるような気がする。自分たち自身が実験の対象となることで、新しい組織のあり方を提案していきたい。
将来的に、FDSが渋谷の「オーシャンズ11」みたいなユニークな組織体になれたら、その時は他の自治体にも同様の組織が生まれて、社会課題の解決や次のステップづくりへのスピードが加速できると思っている。
余談になるが、先日のFIFAワールドカップで日本代表が勝った後、渋谷にものすごいたくさんの人が集まりハイタッチしていた。感動の瞬間に、誰かと喜びを分かち合えるような街になったのは、いつからなんだろうかと思いつつ、警察含めて、この瞬間にいる人々の安全を支える多くのスタッフの視点が自分にも生まれてきた。日々のチャレンジは多いと書いたが、ポジティブに捉えると、このような環境に自分が居られることは、かなりラッキーなことだと思って、日々過ごすことにしている。
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