日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #04

数々の広告賞を受賞した、高崎市「絶メシリスト」から見える“差別化を超えた地平”

 

海外事例にも見られる、先陣を切って問題を発信する型


 カンヌライオンズ2019の受賞作の中にも、この“先陣を切って、競合も抱える共通の問題を発信”した話題作があります。

 それは、自動車会社VOLVOによる「E.V.A.プロジェクト」です。クリエイティブ・ストラテジー部門グランプリをはじめ多くの賞を受賞しました。

 この事例によれば、現状、多くの自動車メーカーでは、男性の衝突実験用ダミーを使った実験データに基づいてクルマが設計されているとのこと。そうしたことから、女性がむち打ち症になるリスクは、男性と比べて高くなっているそうです。

 また、女性の場合、胸部の骨格や強度の違いから、自動車事故の際に胸部に怪我を負うリスクが男性よりも高くなると言います。こうしたデータも活用し、ボルボは最適な保護機能を目指し、受ける衝撃を最小限に抑えるようなクルマの構造やシートベルト、サイド・エアバッグの開発を重ねてきたそうです。

 E.V.A.プロジェクトの事例は、こちらでもご覧いただけます。
 
事例ビデオ

 このようにボルボは40年にわたって、実験の際も男女平等になるようデータを収集しているのですが、その長年の研究結果を誰でもダウンロードできるようにしました。それが、E.V.A.(Equal Vehicles for All)プロジェクトです。

  “あらゆるクルマがより安全になることを願って”、自社のUSPや差別化ポイントの源となり得る情報を、競合他社にも公開したわけです。

 もちろん、そのことによって、ボルボには良い評判が得られるというメリットがあります。「安全なクルマ社会をリードするボルボ」というイメージの獲得が期待できるわけです。

 参考:ボルボ日本のWebサイト
 

本当に生活者が望んでいるのは何か


 50年以上にわたって広告界の基本中の基本として考えられているUSPや差別化。しかし、社会や商品が成熟してくると、実際に有効なUSPの発見は困難になり、むしろ「生活者側は特に望んでもいない差別化ポイント」が横行する傾向があります。

 そんな中で、先陣を切って「皆が言えること」「競合他社にとっても必要なこと」、そして「生活者にとって本当に必要なこと」を表明することが重要な方法論となり得るのではないでしょうか。
他の連載記事:
日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録