日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #05
コロナ危機で生まれた“新しい日常”。最初に描くのは映画でも小説でも、演劇でもなく「広告」だ
2020/04/22
海外でも数多く見られる、“新しい日常”の描写
我われがいま進行形で経験しているこの“新しい日常”を、コンテンツとして描くのは、映画でしょうか、小説でしょうか、演劇でしょうか?
果たして答えは?
どうも、いち早く描くことが出来ているのは、「広告」コミュニケーションのようです。ここでは、2つの事例を取り上げてみましょう。
ひとつ目は、NIKEの「Play for the World.」。
「リビングルームで運動する人々へ」というタイトルとモノクロの静止画で始まるこの1分間の動画は、すでに400万回近く視聴されています。動画は、「キッチンで運動する人々へ」、「寝室で運動する人々へ」と積み重なっていき、「(今は)集まって運動は出来ないかもしれない」と続き、最後には、「これは我々のチャンスだ。世界のために(自宅で)運動しよう。」というメッセージで締めくくられています。
こんなにもシビアな日常を切り取りながらも、NIKEのブランド価値を高める広告コミュニケーションとして充分に成立しています。
2つ目は、石鹸やスキンケアのブランドであるDOVEの「Courage is Beautiful(勇気は美しい)」です。
新型コロナウィルス対応の最前線で闘う医療従事者の皆さんの静止画が積み重ねられています。その写真はどれも、防護アイマスクの付け過ぎなどで傷みきった顔のアップです。
最後には、勇気は美しいというキャッチフレーズと、DOVEが医療従事者への寄付を始めたというメッセージが現れます。長年、メイクで飾るのではなく、自分自身の“素の”美しさを大事にしようと呼びかけて来たDOVEだからこそ、納得できる表現です。
広告の「イマを切り取る」という機能
ここまで見て来たように、広告コミュニケーションは、誰も経験したことのない、現在進行形の“新しい日常”を見事に切り取ってみせてくれています。
そして、そうすることによって人々の共感を得て、商品やブランドの価値を上げることにも成功しています。この未曽有の経験を通して、我われは、広告の持つ「イマを切り取る」という機能に、改めて気づいた形です。
この多くの試みの中から、素晴らしいコンテンツが幾つも出て来ることをワクワクしながら楽しみにしているところです。
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