アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #04

コロナ流行を経験した企業と個人は、どんなポートフォリオを組むべきか【足立光】

前回の記事:
こんな時代だからこそ“HOW”を追求しよう – 渋谷未来デザインの挑戦
 本記事は、足立光さんのブログ「足立光の負けない日本人」の記事を再編集したものです。
 

アフターコロナで、外せない3つの「バランス」


 東洋経済オンラインに3月下旬「新型コロナの自粛モードを打ち破る3つの方法」という私のインタビュー記事が掲載されました。

 それから約1カ月が経ち、日本全国で緊急事態宣言が発令されるなど、世の中は大きく動きましたが、その間にいろいろな方とお話して、この記事に補足した方がいいなと思えることがいくつかありましたので、自分の考えを書き記しておきます。     
    
足立光
ナイアンティック シニアディレクター
プロダクトマーケティング
P&Gジャパン、シュワルツコフ ヘンケル社長·会長、ワールド執行役員などを経て、2015年から日本マクドナルドにて上級執行役員マーケティング本部長としてV字回復をけん引。2018年9月より現職。I-neの社外取締役、ローランド·ベルガーやスマートニュースのアドバイザーも兼任。著書に「圧倒的な成果を生み出す『劇薬』の仕事術」、「世界的優良企業の実例に学ぶ『あなたの知らない』マーケティング大原則」。オンライサロン「無双塾」主催。

 まず、前提となっているのは「このような緊急事態は、また起こる」という考え方です。パンデミックのリスクと脅威は、すでに何年も前からビル・ゲイツが指摘したり、小説(映画)「ダ・ヴィンチ・コード」の続編である「インフェルノ」、映画「コンテイジョン」などの作品でも言及されたりしてきました。実際、これまでも毎年世界のどこかで疫病が流行しています。それがコロナのような世界的な流行にならなかったのは、幸運だったと言わざるを得ません。

 世界がグローバル化して人の移動が多くなった現在、このようなパンデミック的な緊急事態が再度起こることを前提に、事業や自分自身の将来を考えるべきだと思います。また自然発生でなかったとしても、これだけウイルスが脅威であり、拡散を止めることが容易ではない、ということが知れ渡ってしまった今、今後のテロの中心は武力ではなくウイルスになることも想像できます。

 日本では、地震は「また来るもの」として考えられていますし、それに向けた準備は個人でも企業レベルでも行われています。同様に、「ウイルス性の緊急事態」に対する準備を常日頃から考えておきましょう、ということです。

 さて、先述のインタビューでは、自粛を打ち破る方法が3つあるとコメントしましたが、1点目の「中長期的なビジネスをシミュレーションする」というポイントについて、「具体的に何を考えたらいいの?」という質問を多くいただきました。ポイントはいろいろありますが、まずは次の3点の「バランスをとる」ことが大切だと思います。

(1)事業カテゴリー
 同じ種類の商品・サービスを販売する事業であっても、飲食店向けか一般家庭向けかで現在の売上は大きく異なっています。また、化粧品やアパレルなどの一部は、緊急時に「不要不急」の事業ではないことも明確になってしまいました。

 多くの化粧品会社では、すでに化粧品の製造ラインでハンドサニタイザー(除菌ジェル)などをつくり始めています。このように、「緊急時にも必要とされる(営業できる)事業」を、事業内容にきちんと組み込んでおかないと、次の緊急時には対応できません。

(2)リアルとネット
 人が外に出なくなると、買い物でもサービスでも、インターネットに消費行動の多くが移行することが明らかになりました。多くの飲食店が、外出や来店を前提としないデリバリーで売上を稼ごうと必死です。

 このように、リアルが事業の中心であっても、インターネットで売上を立てることができるインフラを整えてくこと、また同じ事業ではインターネットでの売上をある程度上げておくことが、今後の緊急時への準備になります。
 
写真123RF

(3)場所
 外出自粛は、住宅街よりオフィス街や繁華街に大きな影響があったことが、すでに明確になっています。また、同じ繁華街でも、地域によって差があります。今後のビジネス展開を考えるにあたって、いわゆる繁華街だけではなく住宅街も、また同じ繁華街でも差のある場所に展開することが必須だと考えられます。

 これは国のレベルでも同様で、まだ日本が緊急事態宣言の真っただ中、台湾はある程度普通の生活に戻っていますし、韓国も4月19日に一部規制を緩和すると発表しました。地震対策同様に、どこか1国ではなく複数の異なる国で事業を展開しておくことが、事業の継続性につながることは明白です。

 多くの方にとって、上の3点のバランスを取ることが難しいことは承知しています。しかし、「今後、コロナ並みの緊急事態がまた来る」と想定した場合、避けられない事実だと思います。

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