アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #10
アフターコロナのマーケティングは、「LTV」と「トレーサビリティ」がキーワード【江端浩人】
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※本記事は4月24日の取材に基づいた内容で構成されています
様々な「モノ」の概念が変化していく
新型コロナウイルスは、言うまでもなく、大きなインパクトを各方面に与えた。特にリアル店舗や施設を持つ事業者や、交通系・観光系企業への影響は計り知れないだろう。
今後、大きな問題になると注目しているうちのひとつが、国際間の人の往来だ。経営が悪化した米国の航空機製造大手ボーイング社に対して、一旦は回避となったものの、米国政府による支援の話が出るなど、航空業界も甚大な影響を受けている。
しかし、実は旅客機には飛行中に2~3分で機内の空気を全て入れ替わる仕組みや、空気を清潔に保つための高性能空気フィルターなど、感染を防ぐための高い技術が採用されている。そうした技術は、感染などの予防対策として飛行機以外にも応用されていくと予想している。
ソーシャルディスタンスが重視され、不動産の概念も変わるはずだ。欧州は多くの建物が石造りで何世代にも渡って使用され、建物内を温水が駆け回るセントラルヒーティング(集中暖房)という仕組みが採用されているが、日本の空調システムに比べると換気が悪い。今後は、空調や換気という観点からも不動産が選ばれる時代がくる可能性もある。
マーケティングの観点で重要な変化は、インターネットでのコミュニケーションが一般化する分、リアルの価値が今以上に高まることだ。昔からスポーツ観戦は、スタジアムに足を運んで試合を観ることの価値がテレビやインターネット越しで見ることに比べて、リッチな体験として捉えられていた。また、演劇も値段は高くとも、実際に劇場で見た観客は「やはり本物は違うよね」と思っていた。店舗での購入も同じように、より貴重な体験として認知されていくはずだ。
先行事例を紹介すると、ビジョナリーホールディングスが運営するメガネスーパーは、店舗をコンタクトレンズのサブスクリプション契約をしてもらう場としても位置付け、契約後はインターネットから注文してもらい定期的に商品を配達している。つまり店舗は体験の場、インターネットは関係構築の場と位置づけているのだ。このように、店舗の価値を再定義することが必要だ。
こうした変化を踏まえると、従来通りにビジネスを展開していると、変化に対応した企業との競争に負けてしまい淘汰されてしまう。だが一方で、新たな価値を提供できれば、大きく成功できる可能性があるとも言える。