アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #06

ウィズ・アフターコロナの消費者欲求は、失われた五感の回復【大松孝弘】

前回の記事:
自由な働き方が加速。企業も個人も「羅針盤」を持つことが大事になる【加来 幸樹】
 

市場や競合ではなく、人間(n=1)を見に行くべき


 コロナ禍における消費トレンドを“巣ごもり消費”という現象面で捉えても、変化の本質は理解できません。それと同様に、市場の増減や、海外を含む他社が何をしているかばかり追っかけていても、やはり自社ブランドの機会とアイデアを手に入れることはできないものです。このことは今に始まった話ではなく、真の消費者(人間)理解を起点にするというマーケティングの原則です。

 しかし、いま多くのビジネスリーダーやメディアは、市場や他社の動きに目を奪われるあまり、人間に向き合っていないと思います。

 本来は、コロナ禍が一定程度の収束をみるまで強いと考えられる“ウィズコロナの消費者欲求”に加えて、コロナ禍が一定の収束を迎えた後も続く“アフターコロナの消費者欲求”も含めて、市場や競合の動きではなく、ひとりの人間(n=1)を見にいくことで、ニューノーマル(新常態)における消費者理解を掘り下げるべきです。表面的な消費者理解では通用しない変化が起きているのです。

 変化で生まれる新しい欲求と、企業やブランドが提供する価値とにギャップが生じれば、ビジネスは縮小へ向かってしまう。だからこそいまは、進めている事業やブランド、製品・プロモーションの戦略を消費者理解から総点検すべきときなのです。
 

短期間に大量の定性情報(n=1)を収集する、オンライン調査手法を活用


 いま消費者が求めていながらも充分に満たされていない欲求を理解するために、多種多様な消費者行動の事実をオンラインで集めました。その数、1005件です。生活領域を網羅的に調査するために、我われデコムが定義する「いま人がお金と時間を使う14の生活領域」のフレームも活用しています。

 具体的には、コロナ禍で変わった生活行動に関して、人はいつどんなときに(シーン)/どのような要因によって(ドライバー)/どのような感情を伴う価値や不満を感じて(エモーション)/その背景にはどんな生活や価値観があるか?(バックグラウンド)といったインサイト4要素について調べました。

 次に分析は、次の2つの視点で行いました。
 
1.新しい行動による「価値の新発見」
    コロナ禍が生んだ新たな行動に感じられた、新たな「良さ」や「意味」。

2.従来の行動の「価値の再認識」
     以前から行っていた行動に、コロナ禍になったことで改めて感じた「良さ」や「意味」。

 そこから、それぞれの価値が求められているものの、「まだ十分に充たされていない欲求」を考察しました。消費者が新たに感じている価値から見ると、実態としてはまだ消費者の欲求は充分に満たされていない状態です。

 我われの共感研究では、「消費者が求めているが実現できていない願望」が、共感を生みだす原動力になっていることが分かっています。消費者の行動や意識の変化は、共感や反感の心のスイッチも変化させます。その心の琴線を上手く捉えなければ、製品やプロモーションは不発に終わってしまうだけなく、嫌悪感を生んでしまうこともあり得るでしょう。

 この満たすべき欲求を「共感スイッチ」として整理しました。また、共感を得られなかったり、嫌悪感につながったりする点も確認し、企業が留意すべき「非共感ポイント」としてまとめました。

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