日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #06

サントリー「話そう。」 自粛生活の中、ブランドの存在意義を示したお手本

前回の記事:
コロナ危機で生まれた“新しい日常”。最初に描くのは映画でも小説でも、演劇でもなく「広告」だ
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介し、その分析に努めていますが、この連載ではいつもとはある意味で逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、その上でその意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかを考えていこうと思います。

実際、日本で話題になった事例の中には、海外のトレンドの延長線上にあるものが、少なからず存在しています。今回も、前回に続きコロナ危機を題材にした最新広告事例をご紹介します!
 

サントリーは単に飲み物を売っているのではない


 皆さん自粛生活の中、誰かと話していますか? 家族以外の誰とも話していないという人も多くいるのではないでしょうか。中には“まったく誰とも話していない”という人もいるかもしれません。僕の知人にも「声の出し方を忘れそうだ」という一人暮らしの人がいます。

 そんな日常は、けっこう辛いものです。我われの毎日は、誰かと話すことで救われ続けているのです。

 そんな生活の中で、サントリーが「話そう。篇」「話そう。みんなで篇」というWeb動画 / テレビCMを、5月8日から順次発表しました。Webサイトには次のメッセージが綴られています。

 「お酒や飲料を通じて、人と人のつながりをつくってきたサントリーだから。いま“話そう。”というメッセージをお届けしたいと思いました。笑って、愚痴って、分かち合って。感情が外に出れば、心は少し軽くなる。大丈夫、つながってる。♯話そう。」
 
 いろんなタレントが登場して、オンラインツールで会話しているシーンが積み重ねられ、合間に「気軽に会えない今だけど、誰かと話せば、心が少し軽くなる。笑って、愚痴って、分かち合って。大丈夫。つながってる。」というサントリーからのメッセージが効果的に発信されています。

 ふだん見られないタレントの姿が垣間見られ、また皆さん本当に楽しそうに話しているので、「話すことの大切さ」について、かなり心に響く内容に仕上がっています。

 では、なぜサントリーは泡のきめ細かさでも、お茶の製法でも、ウィスキーの高級感について語るのでもなく、「話そう」とメッセージするのでしょうか?

 これは、近年「ブランド・パーパス」と呼ばれ世界の広告界 / マーケティング界を席巻している考え方に添い、パーパスに振り切った内容にしたからだと考えられます。パーパスに関しては、この連載内でもP&G パンテーンの事例をご紹介した時にも言及(「ソーシャルグッドからブランドパーパスへ。P&G パンテーンは、なぜ社会問題を題材としたのか?」 )しましたが、今回は少し違った角度から取り上げています。

 ブランドの存在意義などとも訳されるブランド・パーパスは直訳すればブランドの目的です。この例で言えば、サントリーというブランドのパーパス(目的)は、“お酒や飲料を通じて、人と人のつながりをつくる”ことなのです。だからこそ、リモートでも良いので“話してつながろう!”というメッセージは、お酒や飲料自体について語るよりも、サントリーというブランドにとって必要なことと考えられるわけです。

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