解説・ビリー・アイリッシュ 日本でヒットさせたマーケティング戦略 #01

日本でのヒットは難しいと思われた、ビリー・アイリッシュ。なぜ成功できたのか、軌跡を振り返る

 

ビリーの言葉をあえて「直訳」にした理由


 Twitterで発信するビリーの言葉は、極端に言えば「直訳」に近い形に徹底的にこだわった。通常であれば、内容を日本向けに加工したり、意図的に“らしさ”を加味しながら和訳するところ、それを「絶対にしない」とマネジメントサイドと約束した。CDに添えるキャッチコピーも、Twitterの投稿一つひとつも、彼女のクリエイティビティをあるがままの形で活かすことを念頭に置いて制作した。

 こうした、他のアーティストとは一線を画した試みが奏功して、彼女の個性は歪んだり弱まったりすることなく、オリジナリティを色濃く残したままコアターゲットに伝わっていった。

佐藤 これまでは、海外アーティストの日本における展開は音楽会社の日本法人に一任され、本国の企画をローカライズして進めていくことがほとんどでした。でもビリーの場合は本人やマネージャーとのダイレクトなやりとりの中で、一つひとつの企画や表現をつくり上げていきました。「点をつくり、点をつないで線にしていく」作業をアーティストが主体的に進めていくスタイルに、今の時代らしさみたいなものも感じましたね。



 活用するメディア・プラットフォームも、コラボレーションする企業も、実施する企画内容も、アーティスト自身がきちんと関与しながら決めていく。だからこそ、ビリーがヒットするまでには、少々時間を要した。

 しかし、国境を超えてダイレクトにコミュニケーションをとる手段が確立され、アーティスト自身が主体的に活動することが可能になった今の時代、今後はビリーのスタイルが業界のスタンダードになっていく可能性が高そうだ。

第2回 日本では『bad guy』を打ち出す。ストリーミング市場で勝つ、ビリー・アイリッシュ陣営の選択 に続く
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