アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #特別編
有料チケットを5000枚以上販売。「劇団ノーミーツ」会わない制約から生まれた新しいエンタメの可能性
デビュー動画がTwitterで1.8万いいね
4月9日、新型コロナウイルスの感染拡大で先行きの見えない状況に人々が打ちひしがれていた頃、「ZOOM飲みしてたら怪奇現象起きた...」というテキストと共にあがった2分18秒の動画はTwitter上で瞬く間に拡散され、1.8万いいねがつけられた。突如としてあらわれたエンターテインメント集団、「劇団ノーミーツ」のデビュー動画だ。
当時、Zoomが流行り出した空気感をうまく掴み、リアルと映像を融合させた動画は斬新であり、オンラインコミュニケーションツールの活用の幅を広げる新たな挑戦であった。
劇団ノーミーツは、「NO密で濃密なひとときを。」をコンセプトに、打ち合わせから上演まで一度も会わずに活動するフルリモート集団。5月に旗揚げ公演として上演された『門外不出モラトリアム』は、急遽再演が決まるほど話題となり、その再演を含め2500円の有料チケットが5000枚以上売れた。
結成から3カ月。劇団員メンバーの3人、主宰の広屋佑規氏、舞台監督の梅田ゆりか氏、テクニカルディレクターの藤原遼氏に公演の裏側を語ってもらい、そこから見えてきた新しいエンターテインメントの可能性を紹介していく。
構想から4日で誕生した、スピーディーさ
劇団ノーミーツの主宰のひとりである広屋氏は、もともと没入型ライブエンターテインメントカンパニー「Out Of Theater」代表であり、根っからのライブエンターテインメント人間。これまで、さまざまな公共空間や都市空間を舞台に、イマーイブ(没入型)な体験を軸としたエンターテインメントづくりを手掛けてきた。
そんな広屋氏が劇団ノーミーツを立ち上げようと思ったきっかけは、新型コロナウイルスによって予定していた企画がすべて中止、または延期となったことだった。「突如として活動がゼロになってしまいました。それで、新しいことを始めなきゃダメだと思い、自宅でできるZoom演劇を思いつきました」(広屋氏)。
そこで広屋氏は、共同主宰となる映画プロデューサーの林健太郎氏、脚本家の小御門優一郎氏に声をかけた。映画業界や演劇業界に従事する彼らもコロナ禍で仕事が止まり、エンターテインメント業界の不安定さに直面していたという。
「Zoomで初会議を行ったのが4月5日。そこからすぐに最初の動画を制作し、4日後にはTwitterアカウントも開設。時間が余っていたのでスピーディーに動くことができました。最初の動画をTwitterに投稿したところ、想像以上の反応が得られたのでこのまま継続して活動することを決めたんです」(広屋氏)
その後、長編公演の上演に向けて、舞台監督の梅田ゆりか氏らにも声をかけてメンバーは増えていった。中でも、フルリモート演劇という新ジャンルを大きく前進させたのは、テクニカルディレクターの藤原氏の加入にあった。