日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #07
広告の常識からは、前代未聞。ラベルを剥がす、サントリー 伊右衛門テレビCMの狙い
2020/08/19
海外では今も昔も、「ブランド訴求」が基本
海外事例では昔から“ブランド訴求”が基本で、例えばクルマの広告で、いわゆるディスプレイカットとしての当該自動車は出て来ずに、メッセージとロゴマークだけ、といった例は、たくさんあります。商品の広告というよりは、“メッセージとロゴの広告”と言えるような事例です。
ここでは、カンヌライオンズ2018のプリント&パブリッシング部門グランプリ『タグワーズ(バドワイザー)』をご紹介しましょう。
いくつかのキーワードと年号が掲示され、“検索して”というコピーとバドワイザーのロゴだけが記載されている広告が、雑誌やアウトドアなどで展開されました。これらのキーワードを入れて検索すると、超有名ミュージシャンがバドワイザーを手にしている写真が見つかる、というものです。
バドワイザーは多くのミュージシャンに愛され、音楽とともに歩んできました。その証として「ミュージシャン×バドワイザー」の写真がネット上に数多く存在しています。しかし、契約とお金の問題で、それらの写真を広告に使うわけにはいきません。そこで、ある特定の写真にネット上でたどり着くための「キーワード」のみを、雑誌広告などとして活用したわけです。
とても気が利いているうえに、イマドキのデータ活用力も主張した優れた事例ですが、これも、つまりは、バドワイザーのパッケージ缶が長年ミュージシャンとともに(音楽とともに)あることを訴求するもの。この事例から、ブランドやパッケージを取り除くことは考えられません。